初めて生で見た陰毛[2]-毛から世界を見る 43- (松沢呉一) -2,607文字-
「初めて生で見た陰毛[1]-毛から世界を見る 42」の続きです。
東武練馬の北野湯は我が観光視点で高得点
数日前に行った、東武練馬駅の北野湯も我が観光視点として高得点でした(住所は板橋区徳丸)。あくまで私の趣味ですから、興味を抱いて行ったところで、どこがいいのかわからない可能性が高く、以下は推薦の文章ではありません。
おばちゃんに聞いても、いつの建物かわからず、「たぶん50年くらいじゃないの?」と言ってましたが、昭和20年代じゃなかろうか。この物件はおばちゃん夫婦が借りているものなので、古いことは知らないのです。
高度成長期型ではなく、もっと前ですが、凋落感の強さが私の好みで、昔の映画館みたいな入口です。地方都市では見かけたりしますけど、東京ではこういうタイプは少ない。タイルもボロボロで、あちこち剥げてます。
ついでに富士山のペンキ絵もボロボロ。ペンキ絵は剥げてきたり、カビが生えてきたりするので、本来は2年から3年くらいで塗り替えるのですが、昨今は余裕がないので、ボロボロになっているところが多いものです。汚らしいだけなので、ペンキ絵の凋落感は好きではありません。
その点、タイルは耐用性があります。前回写真を出したように、この銭湯にもペンキ絵の下にタイル絵があり、女湯との間の壁にもタイル絵があり、どちらもオーソドックスな絵柄で、タイル屋にフォーマットがあるのだと思います。ここのタイル絵はそんなに古くはない。20年くらいでしょうか。ペンキ絵の下は昔は銭湯広告のスペースでしたが、そこが使われなくなって、タイル絵にしている銭湯がよくあります。
建物もよかったのですが、ここの高得点はおばちゃんです。おばちゃんと言っても70代後半だと思います。つまりはおばあちゃんなのですが、すんごい元気。
※今回出している写真はすべて北野湯です。
一番大変なのは掃除
おばちゃんは石川県出身です。都内の銭湯は新潟を筆頭に、富山、石川の出身者が圧倒的に多い。
「雪国の人は辛抱強いからね」とおばちゃん。
長らく東京の下町で暮らしていたのですが、20年前からこの物件を借りて銭湯をやっています。ダンナさんは病気で寝込んでいるのですが、息子さんが手伝ってくれているので、やっていけています。
ここは今も薪で湯を湧かしています。薪は温度調整に気を遣い、たびたびくべなければならないので面倒だし、体力がいるのですが、老化防止のために今も薪です。横の薪置き場を覗きましたが、今はダンネージ(港などで使う荷敷き)の廃材が多いものです。
「でも、薪は大変じゃないですか」
「いや、銭湯で一番大変なのは掃除なんですよ」
どこの銭湯でもたいていこう言います。
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