小池百合子を褒めるとしたら—衆院選で注目していた選挙区-(松沢呉一) -3,629文字-
小池百合子の功績
今回の選挙では、ほとんど私は外向けの発言をしませんでした。内輪でも全然言ってないな。
「ビバノン」を閉鎖系に変換して以降、自分の意識自体が閉鎖してしまって、外の世界にとことん興味がなくなっています。外に興味を抱くとイヤーな気分になりますしね。その結果、「ビバノン」は戦前の話ばっかりに。
今回の選挙に興味がなかったわけではなく、報道には目を通していたんですけど、SNSでいくら書いたところで、同じような考えの人のところにしか言葉が届かないので、それだったら、どっかの候補のためにポスター貼りでもやった方がいい。これなら、道行く人が相手ですから、さまざまな考えの人たちに届く。
応援したい候補は複数いたのですが、いずれも東京ではないので、ポスター貼りもできやしない。
内心応援していた候補は皆さん当選してなによりですが、自民党政権は安泰。見事に小池百合子がやらかしてくれました。
ここまで書いてきたように、広告代理店的なイメージ作りの点だけは小池百合子はうまいと感心するところもありましたが、策に溺れ、自分に酔い、図に乗った結果、そのイメージは天から地へ。実像が露呈し、あっさりイメージを乗り越えた選挙でした。
イメージは現実とは違います。時には完全な虚構です。それでもイメージは人を動かしますから、イメージ作りは大事なんですけど、中身があってのイメージです。
でも、これで「女が政治家になれば世の中よくなる幻想」は木っ端微塵に打ち砕かれたのではないですかね。政治家としての信頼と引き換えに、これをやってくれた小池百合子を誉め称えないではない。
「男は好戦的/女は平和的」のようなイメージで政治家を語ることと、女学校から現在の女子大まで「女は政治に向かない」として、生徒を政治から遠ざける教育をやっていることとは同じであり、「男は〜/女は〜」という属性判断こそが女性議員率を下げてきました。この属性判断の根幹にあるのは良妻賢母なのであります。
根の深い問題ですから、どうせまた立ち現れてくるでしょうが、「女の議員を増やせ、クオータ制度を導入せよ」などと主張して粗製タレント議員だらけにして、「女の議員は使えない」という現実を作りたい人たちにはとっとと消えてもらって、その前提となる土台を作っていくしかないべさ。詳しくは「日本の女性議員率」シリーズを参照のこと。
※写真は江戸川区です。右から選挙区当選の自民党候補者、比例区当選の立憲民主党候補者、3万円払ってツーショット写真を撮らなかったのがせめてもの救いの希望の党候補者
政界にいて欲しかった人
なんと言っても、女性議員で残念だったのは豊田真由子です。
「テレ朝ニュース」より
泣き顔はまゆたんには似合わないです。どんなに辛くても怒鳴ってなきゃ。
なんで彼女は後処理を速やかにやってダメージを最小限に留めなかったんですかね。大きな差をつけられ、5人の候補者の中で最下位なので、どうやっても今回の選挙では当選できなかったとは思いますけど、うまく処理すれば次があったかもしれないのに、惜しい人材を政界は失いました。皮肉でもなんでもなく、本気で私はそう思っています。
子育てをしながら政治家をやってもいいのですが、それができなければ、子育てを夫に任せて、自分は政治家としての責務をまっとうする。そういう覚悟のある人材が必要なのです。男のように怒鳴ってもいい。でも、運転中の暴力はいけませんわね。男でも女でも政治家が刑事事件をやらかしちゃダメです。
政界にいなくていい人
その点、金子恵美(「めぐみ」の方の金子恵美。新潟4区の方の金子恵美。落選した方の金子恵美。いらん方の金子恵美)は永遠に政界にいなくていいんじゃないですか。そうも子育てが大変だったら、送迎くらい夫にやらせればいいのに、それさえできないような人間が政治家として何ができましょう。
以下は「産経ニュース」。
この新潟4区は注目してました。
以下は「アエラドット」より。
菊田真紀子の言い分によると、金子恵美は確認もしないで、Facebookに書き込んだようですが、菊田真紀子はSMバーについて確認もしないで、「口にするのもけがらわしい」と国会で言い放った人間ですからね。どっちも信用ができません。私はこういうのをずっと覚えてます。ああいう安易な発言をすると敵を作るのですよ。
「どっちも落選すればいいのに」と思って注目していたのですが、新潟4区はこの2人しかいなかったのよね。どっちかを選ぶんだったら、菊田真紀子になってしまい、「けがらわしい糞候補め」と言いながら菊田真紀子に投票せざるを得なかったので、新潟4区の住民じゃなくて本当によかったと思いました。
この記事によると、菊田真紀子側はこの段階ですでに警察に通報しているとのことなので、選挙が終わって間もなく動きがあるかもしれない。もし金子恵美がFacebookに書き込んだことが事実であれば、金子恵美から告訴、告発するのが筋です。公選法違反ということになれば議員辞職は免れず、繰り上げ当選するのですから、そうしないはずがない。「事実だとしたら」ね。
事実だとしたら、こんなことをFacebookに書かず、証拠を揃えて提出すればいいだけ。繰り上げ当選確実なんですから寝てればよかったのです。
もし事実じゃなかったとしたら、虚偽事実の流布で、選挙違反に問われます。名誉毀損で訴えることもできましょうけど、当選した菊田真紀子としてはそこまでやる必要はないか。
金子恵美を擁護した人たちをしつこく批判する
金子恵美は人徳がないようで、支援者たちにも見放されたと報じられていました。
あくまで推測ですが、支援者の中に、本心としては「おまえはもう応援できない」って人がいて、そうは言えずに適当な理由を口にしてしまい、金子恵美は、裏取りもせず、また真意も読めずに、感情に任せて書いただけだろうと思います。つくづく政治家に向かない人です。
上の「産経ニュース」では夫のことは本文で触れるのみで、見出しにまでは使ってないですけど、日経は「「不倫」宮崎氏の妻」と見出しにまで出しています。
落選した報道の見出しにまでしなくてもいいのに。ちょっとここは同情しないではない。同情はちょっとだけで、残りは「ざまあ」ですけど。
この人がこれまでもっとも話題になったのは不倫夫の妻としてであり、二番目に話題になったのは公用車の私的使用ですから、メディアとしても、その説明をせざるを得ないですわね。それを説明しないと、「誰?」になってしまいます。
改めて、そのふたつの話題が報じられたため、「いまさらながら金子恵美衆議院議員の公用車問題」へのアクセスが増えてやんの。
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