松沢呉一のビバノン・ライフ

高年齢出産はいつから忌避されるようになったのか—勘で読んだ海老原嗣生著『女子のキャリア』(補足編)-(松沢呉一)-2,811文字-

「勘で読んだ海老原嗣生著『女子のキャリア』」シリーズの補足です。補足というより蛇足かな。

 

 

 

母性強化の時代

 

vivanon_sentence以下は海老原嗣生著『女子のキャリア』の主張を覆すようなものではありませんが、「ここは違うかも」と思った点です。あくまで「かも」程度です。

女子のキャリア』では「女は〜べし」という押し付けに反発しているところが多々見られます。そこは同意できます。

この本の最終章は「出産は20代ですべし」という論調に対する反論になってます。これによって人生設計が狭められてしまうことに著者は大いに反発しています。

私の周りは30代、あるいは40代でも結婚をしない選択、子どもを産まない選択をしているのが多く、あるいは40歳前後で出産しているのもいるため、そういう主張にあまり実感がなかったのですが、そういう主張がとくに若年層に対してなされる傾向があるみたいですね。早いうちからそういう考えを植え付けないと効果がないですし。

たとえば以下の記事もそれを踏まえてます。

 

 

 

2018年3月13日付「BUSINESS INSIDER」より

 

 

30代後半でも高年齢出産とされてしまって、出産、とくに初産をためらう人たちがいることに対して、海老原嗣生氏はこれまたデータを踏まえて、こういったキャンペーンの数字にはごまかしがあることを丁寧に指摘しています。

しかし、「女は出産マシーンである」という主張は、母性保護、良妻賢母の考え方と合致しますから、これを受け入れる人たちはおそらく多いのだと思います。

繰り返しますが、個人としてそれを選択するのは自由。その選択を侵害してはならない。と同時に、そうではない生き方もまた尊重されるべきであり、まとめて「女は早く子どもを産むべし」と押しつけてはならず、なおかつそこにごまかしがあってはならない。

 

 

古くから高齢出産のリスクは知られていた

 

vivanon_sentence海老原氏は、「かつて日本の女性は、四〇代前半でも普通に子供を産んでいた」と書いています。つまり、高年齢出産が当たり前になされていた時代がずっと続いていて、それを忌避するようになったのはそう古い話ではないのだと。

浜田栄子もおそらく母・捨子が40代になってからの子どもです。長女は早く亡くなっていて、それを除いて兄と妹だけですから、多産家庭ではなかったわけですが、こういう例はあります。

しかし、実のところ、高年齢出産は避けた方がいいという主張の始まりは案外早いのです。

 

 

next_vivanon

(残り 1927文字/全文: 3007文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ