松沢呉一のビバノン・ライフ

東京医科大特有の事情があった—東京医科大女子減点問題[下](松沢呉一)-3,804文字-

医大・医学部の女子率調査—東京医科大女子減点問題[中]」の続きです。

 

 

 

女性医師の現状と国際比較

 

vivanon_sentence少々内容が古いですが、厚労省女性医師の年次推移という資料を見ると、着実に医師における女性率は上がってきています。

 

 

 

数字がグラフにかぶっていて見にくいですが、一番右が平成24年で、この時点で19.7パーセント。前回見たように、この数字を下回っている学校はほとんど消えていて、おおむね30パーセント前後に達しているため、今も少しずつ全体の数字が上がっていることが推測できます。

しかし、国際的に比較すると、いかに日本では女性医師が少ないのか、同報告書の表を見ると明らかです。

 

 

調査対象国の中で日本は最下位です。

歯科医でも医師でも、女性であること自体のデメリットはとくにないでしょう。患者の側に「女医さんは頼りない」というイメージを持っている人がいるかもしれないけれど、仕事上不利になるくらい多いわけではない。

現実に各国これだけ女性医師が多く、半数を超えている国も少なくないので、性別による能力差が存在しているとは思いにくい。

「女子は理系に向かない」と社会も本人も思い込んでいる、「医大は金がかかり、息子はともあれ、娘には行かせられない」と親が考えて看護学校どまりになるなんて事情がさまざまからむのでしょうけど、東京医科大学の受験者における女子率は39パーセントですから、率で見ると、ニュージーランドやフランスなみです。そこは変化している。しかし、学校が足を引っ張っている。

女子は学校を場所で選ぶとも言われていて(オシャレなところを好むというだけでなく、不便な場所だと親元から通えなくなる)、たしかに東京医科大は便利ではあります(新宿六丁目)。だから女子人気が高いのかもしれない。その事情はわからないですが、高すぎるが故に操作するしかなくなったのだろうと推測します。では、どこにそうする理由があったのか。

 

 

東京医科大が欲しい人材

 

vivanon_sentenceその能力を取り出した時には、とくに女であることのデメリットがあるわけではないと思うのですが、データをさまざま見ているうちに、状況次第で、デメリットに感じるケースがあり得ることに気づきました。

この判断には東京医科大学特有の事情があったのかもしれない。

東京医科大学病院についての説明を読んでいたら、こんな一文が出てきました。

 

 

特に外科系診療科においては、日本のトップレベルの実績を誇るロボット支援手術や内視鏡を用いた手術を積極的に実施しています。また、新規医療技術の開発や種々の臨床研究も積極的に進めております。

なお、国内初の「ロボット手術支援センター」を設置、より一層の技術向上をはかり、低侵襲で安心・安全な医療が提供できるよう全職員が一丸となって取り組んでいます。

 

 

どうやら東京医科大病院は外科系に力を入れているようです。東京医科大病院は救急指定病院であり、救命救急センターもあるので、その点でも外科医が欲しいはず。手術を要する怪我や病気で運ばれても夜勤の外科医がいなくて朝まで何もできないのでは死んでしまいます。

 

 

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