松沢呉一のビバノン・ライフ

名古屋の風俗嬢はホストが好き—監禁されたヘルス嬢[2]-[ビバノン循環湯 507] (松沢呉一)

悪質性風俗店「名古屋系」—監禁されたヘルス嬢[1]」の続きです。

 

 

 

名古屋から進出した性風俗店の悪い評判

 

vivanon_sentence歌舞伎町の名古屋資本の店は「名古屋系」と呼ばれており、ほとんど常に悪い評価とともにこの言葉は使われる。

3ヶ月ほど前のこと、知人のライターから、東京に進出している名古屋系の店を調べて欲しいと依頼された。彼は店に潜入して確認をとることになっているのだが、その前にどんな評価がなされているのか知りたいのだという。

私自身は入ったことも取材したこともないので、風俗関係者に聞きまくったのだが、ロクな話が出てこない。「雑誌の割引チケットをもっていっても、ほとんどの女の子は使用できず、暇をしている子にのみ使用できる」「30分コースで入っても20分で出される」「従業員の態度が横柄」「他店への嫌がらせをする」などなど。

以上のコメントは、名古屋というだけで納得できたりする。

名古屋では、ほとんどのヘルスが入場料というワケのわからないものをとる。30分8,000円だと思って行くと、それ以外に2,000円の入場料をとられるのだ。女の子のバックが4,000円だとすると、プレイ料金8,000円のうちに5割だから、まあまあと思ってしまうが、実際に客が払っているのは10,000円だから、本当のバック率は4割だ。よく言われるように、名古屋人はセコい商売をやるのである。

「従業員が横柄」というのは私自身、名古屋で体験している。市内に300軒以上の店があるヘルス帝国名古屋には何度も取材で行っているが、東京や横浜、大阪、京都、札幌のように、気さくなつきあいがなかなかできない。横柄ではない店は、やたらと腰が低くて、やっぱり対等な関係が築きにくい。全国的に都市部で増えている親しみやすい接客が名古屋ではほとんど見られない。

取材の人間に対して露骨に見下した態度をとる従業員がよくいて、キレそうになったことも何度かある。本誌の編集長と取材に行った時も、腹立たしいことをされて、店を出たあと、2人で「二度と来るか」と悪態をつき、彼はその場で名刺を破り捨ていた。

それでもいくつかの店は親しくつきあってくれているのだが、全体としては、あまりいい気持ちで取材ができない街なので、あれだけ店があるのに取材はたいてい同じ店になってしまう。これは私のみの感想ではなく、名古屋に行きたがらないライターは多いものだ。

※László Moholy-Nagy「Dolls on the Balcony

 

 

バンスで縛る

 

vivanon_sentence名古屋系の店について、こんな話も聞いた。

「女の子は寮に入れられ、バンスで縛られ、軟禁状態で働かされる」

事実かどうかは確かめられなかったが、名古屋系ならあり得ると私は思った。というのも、今でも名古屋ではバンスを出す店の話をよく聞くのだ。

バンスとはアドバンスの略で、要するに前借りである。必ずしも悪質なバンスだけではないのだが、この前借りに高利な利息がつき、辞めるに辞められないようになっているケースがあって、遊廓時代の前借(ぜんしゃく)と同様に機能する。

私が直接知る限り、東京の性風俗店では、善意のものであっても、金を貸す店は非常に少なくなっている。「今日中に利息を払わないと、カードが使えなくなる」といった緊急の場合のために、無利息で上限10万円まで貸し出す店や店長が個人的に貸すような店はあるが、東京で、高額なバンスを出す店があるとすれば、違法性の強いホテトルなどの業種くらいではなかろうか。実際にそういうホテトルがあるのかどうか確認はしてないが。

ところが、地域によっては、今もこのような悪質なバンスを出す店が蔓延っていて、そのひとつが名古屋なのである。そもそも東京では「バンス」という言葉が使われること自体があまりない。風俗業界の人たちは言葉の意味は知っていても使う機会がない。しかし、名古屋ではよく聞く。

 

 

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