BiSHの無観客ライブで泣けてきた—コロナの時代に流行るもの・廃るもの[16]-(松沢呉一)
「在宅勤務で性風俗を利用する人たち・在宅勤務で壊れる人たち—コロナの時代に流行るもの・廃るもの[15]」の続きです。
BiSHのふたつのライブ映像
「感応」は、COVID-19とその対策によって気づかされたもっとも大事かもしれないことなので、以前からまとめようと思っていて、とくに前回出したFacebookの投稿以降、その思いを強めつつ、データを見ながら電卓を叩いたり、自動翻訳を使って各国の事情をチェックしたり、相変わらずの銭湯回りで忙しくて、後回しになってました。
5月2日の朝のことです。BiSHのメンバーと避難所(なんの避難所か不明)で共同生活をしている夢を見ました。教室くらいの広さのところですし詰めになっているのですが、アイナとチッチはどこぞで仕込んで妊娠しまして、膨れた腹を見ながら、「早く産まれるといいね」と話しました。
後付けで意味をここから見出すなら、次の世代に手渡すべきものを破壊されたために、さらに次の世代につなごうとしているといったところでしょうか。
しばらくBiSHを聴いていなかったので、これをきっかけに聞き逃していたBiSHの曲をチェックしたり、見逃したライブを眺めていました。
以下は昨年12月「METROCK ZERO」でのライブ 。半年前です。
やっぱりBiSHは下品でいいなあ。
続いて以下を観ました。
「オーケストラ」はいまさら言うまでもなく、6位の「サラバかな」が私は好きです。でも、私のベストスリーに入る「GiANT KiLLERS」がまさかのランク落ち。
という話はここではどうでもいいとして、コロナ以降、さまざまなミュージシャンが無観客ライブをやっていることは知ってましたが、これで初めて無観客ライブを観ました。
観客を入れないスタジオライブみたいなものは以前からよくありますけど、本当は人がいるはずの会場が映し出された時の悲しみたるや。「リズム」で涙が出そうになりました。
ライブ三昧だった20代
最近の若いモンは知らんだろが、昔はコンサートというのがあって、大勢の人が目の前で演奏される音楽を聴くことができたんじゃ。
そんな昔話をしたくなります。
思い出話が嫌いなのに思い出話をすると、20代を通して私は頻繁にライブに行ってました。学生時代は国内アーティストの方が多かったですが、その後は仕事半分で外タレもよく行ってました。
なんでああも行っていたのかと言えば「音楽が好きだった」ということになるわけですけど、レコードを聴くのもまた「音楽が好き」ということです。それとライブはまた別です。
ライブは音楽に「感応」するに留まらず、生身の人との「感応」を得る体験です。生身のミュージシャンとの「感応」であり、生身の客との「感応」です。
ライブのあとで「今日のライブはよかったね」と言語的に確認することの前に、いわば空気で皆が「感応」する。何バンドも出る時は、それぞれに反応が違って、「えー、このバンドいいのに、受けが悪いな」と思って声援を送る。
ライブはそういう体験です。
※「NON TiE-UP」での「チンコシコってろ」の手。「METROCK ZERO」より
ただの幻想でも人を支える
バンドによっては、無観客ライブではなく、過去のライブ映像をこの期間限定で公開しています。
ジャニーズ系や福山雅治も公開していますが、10-FEET、[Alexandros]、Nothing’s Carved In Stone、Hi-STANDARD、SiM、österreichあたりを私は観ました。いっぱい観てんな。電卓を叩くのに疲れるとライブで休憩します。
中でもSiMは趣向がいっぱいでオモロかったです。観たことのない武道館が観られますけど、警備が大変そう。警備を生き甲斐としていた過去があるものですから、そういうところが気になります。
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