マスクによる環境破壊とエクスティンクション・レベリオン—ポストコロナのプロテスト[1]-(松沢呉一)
世界で巻き起こるプロテスト
あちこちで今なおアンチ・ロックダウンの行動が行なわれています。すでにロックダウンは解除されているか、少なくとも緩和されていますが、それでもさまざまな規制が残っていることやマスクの義務化に反対していて、国によっては感染者の増加にともなって再度の規制強化が予定されているので、それに反対しています。
これらはそのままアンチ・ロックダウンとしてまとめられていることがよくあって、私もそれに倣って、以降、それらの総称として「アンチ・ロックダウン(プロテスト)」とします。
同時に、ロックダウンで抑え込まれていた他のテーマのプロテストも復活、あるいは新規発生中で、コロナ前よりプロテスト行動が拡大し、かつ激化しているようにも見えます。
プロテスト好きの私でありますが、「この人たちは誰なのか」の判断が難しいケースがあります。アンチ・ロックダウンでも、左派と右派とアンチ・ワクチン派と失業者と経営者が渾然としていて、「どんな人たちか」がすぐにはわからない。
今の時代、例えばマスクひとつとっても、ある人たちにとっては命を救ってくれる欠くべからざるもの、ある人にとっては周りに合わせて安心するもの、ある人にとってはうざいもの、ある人にとっては呼吸を困難にして命を脅かすもの、ある人にとっては唇が見えずにコミュニケーションを阻害するもの、ある人にとっては感染を拡大するもの(細胞性免疫説に立つと、マスクは免疫を失わせるものとも言える)です。
そのくらいに物の見方には違いがあって、プロテストもそうなのです。今までの知識で判断すると間違えます。やっている側も、よかれと思ってやったことがとんだ結果を招くかもしれない。
ともあれ、世界で今何が起きているのかをプロテストという切口で見ていくのがこのシリーズです。
※「Global Protest Tracker」 さほど細かくは拾ってないし、さほど頻繁には更新されていないですが、世界のプロテストをマップ化したもの
マスクの環境破壊
まずはプロテストとは関係のないマスクの話。石油製品のマスクは環境破壊を促進し、自然生物を殺すものです。
マスクがいたるところに捨てられているため、掃除をする人が感染する可能性があることが以前から問題になってましたが、外気に晒された場所にしばらく放置されたマスクから感染することはまずないでしょう。
しかし、マスクはウイルスが付着していなくても環境破壊や生態系破壊の原因になります。
三重県の海岸から、最近「ある生き物」が姿を消しました。原因は増え続ける漂着ごみですが、新型コロナの影響で、事態がさらに悪化するのではないかと懸念されています。
9月14日のTBSニュースです。
ウミガメの孵化は14年前の映像であり、これ以降、ビニールやペットボトル、マイクロプラスチックが海や海岸を汚染し、ウミガメが産卵しなくなったと。すでに汚染されていたのだから、そこにマスクが加わっていいってものではない。
海や海岸に流されるマスクはいくつかの経由を経ていて、どれもこれもがポイ捨てによるものではなさそうですが、なんでもいいからマスクをすればいいという姿勢がこの事態を生み出しています。いかに気をつけたところで、落とすことはあります。世界中の消費量を考えると、たかがマスクでも環境破壊はバカにはならないのかもしれない。
以下は香港。
これは3月公開の動画です。民主化運動のマスクも混じってましょうが。
海岸のゴミ拾いをする人たち、ゴミの分別をする人たちは今に限らずマスクや手袋をして作業をするわけですけど、白塚の浜を愛する会の代表も香港のNGOオーシャン・アジアの共同代表も、マスクをしていないところにプライドを感じます。
以下はフランス。
6月公開の動画。
ヨーロッパではポリ手袋をする人も多いため、マスクとともにそちらも問題になっており、このふたつをを合わせて「Covid廃棄物」「PPE(personal protective equipment)汚染」などと呼ばれています。
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