松沢呉一のビバノン・ライフ

ゴキブリとアヒルがつなぐロシアとベラルーシとセルビアの民主化運動—ポストコロナのプロテスト[109]-(松沢呉一)

反プーチンの巨大プロテストは続く—ポストコロナのプロテスト[108]」の続きです。

 

 

 

ナワルニーLIVEのアヒル

 

vivanon_sentence昨日、ロシアから中継をしていたナワルニーLIVEで注目したのはアヒル・マークです。

スタジオにいる進行役2名のうちの右側の人物のパソコンにアヒルのシールが貼られています。

 

 

 

 

下に現在の状況を知らせるテロップが流れるのですが、文字とともにそこにもアヒルが登場(下のSS参照)。このアヒルはおそらく投げ銭の担当で、時々数字と名前つきのアヒルが出てきました。

これ以外のアイコンもあって、民主化のシンボルであるベラルーシの旧国旗を立てたトラックもありました(うんと下のSS参照)。

ベラルーシのトラックが通る時はベラルーシの映像が流れていて、ナワルニー・チームはベラルーシの民主化運動とも連帯しています。このことは、ナワルニーが巨大ゴキブラーを持ち出していたことからもわかります。

となると、アヒルはセルビアの民主化勢力との連帯の意味もあったのかとも思うのですが、はっきりしたことはわからず。タイのプロテストで見られるアヒルはおそらく関係ないかと。

 

 

ベラルーシ国民のEU感情・ロシア感情

 

vivanon_sentence私も正確には理解できていないのですが、ここまで見てきたようにも、東ヨーロッパにおいて、民主化を求める勢力はEU派が多いとは言え、ロシア派もいて、とくにベラルーシは微妙。

ベラルーシのプロテストを主導する人(夫の代わりに大統領選に出たスヴャトラーナ・チハノウスカヤではなく、国内リーダー。名前は忘れました)が、EU諸国がプロテストに肩入れすることを諌めるような発言をしていたことがあります。はっきり真意を説明していたわけではないけれど、「それをやると、国民感情が離れるし、プロテストはEU諸国が背後にいるとのルカシェンコ大統領の言い分が正しく見えてしまうので、ちょっと抑えて欲しい」ということでしょう。

ベラルーシの国民感情としては、EUに親近感を抱いている層とロシアに親近感を抱いている層は拮抗していますが、中立、つまりはどっちつかずの層がもっとも多い。どっちにも属さずに独立独歩でいきたい自主独立派もいましょうが、多くはどっちともうまくやっていきたいか、どっちでもいいといったところでしょう。

以下の棒グラフがそれを示しています。

 

2020年「ANNUAL SURVEY REPORT: BELARUS

 

左から「EUに好意的」「中立」「否定的」「EUなんて聞いたことがない」で、それぞれ2016年から2020年までを示しています。

この世論調査はEU側からのEUをどう思うかを聞いたものであり、逆にロシアをどう思うかを聞いても似たような数字になるはず。

以下は同調査から、どの体制が信用できるかを聞いた結果。

 

 

ロシア主導でベラルーシも加盟しているユーラシア経済連合よりEUを信頼する人が少し多いですが、下に注があるように、EUを知っている人が対象なので、全体ではさらに差は少ない。

しかも、これはEUとユーラシア経済連合は経済的な寄り集まりの比較であって、国としてのロシアへの感情は決して悪くない。

 

 

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