キラキラネームに通じるかもしれない英語圏・独語圏の命名トレンド—男の名前・女の名前[2]-(松沢呉一)
「知人が子どもの命名で悩んでいるのを知って私も悩み出した—男の名前・女の名前[1]」の続きです。
女子に男っぽい名前をつける親が増えている米国やドイツ
たまたま知人に子どもの命名の話を聞いたのがきっかけで、私までが名前について頭を悩ませています。相談というわけではなく、世間話で聞いただけなので、代わりに考えてあげようなんておせっかいをしたいのではなくて、それについて考えていたら、名前について気になることが次々と出てきたのです。
たとえば、なぜキラキラネームが増えているのか。これについてはさまざまな仮想がありそうですけど、よその国でも、ユニークな名前をつける傾向は見られて、そこに何らかの共通点があるのかもしれないし、ないかもしれないし。
例えば米国では、1885年以降、上位10位の名前、上位50位の名前が、全体の何パーセントを占めるのかが調べられていて、2005年の段階で、1885年に比して、男女ともに半分かそれ以下に減っています。ポピュラーな名前をつける親が減って、名前が分散してきているのです。
1885年には上位10位で全体の4割近くを占めていたのもすごい話です。1位だけで10パーセントくらいになったのかも。クラスにジョンが必ず何人もいる。当時のトップがジョンだったか何だったか知らんですけど。
より多くの種類の名前に分散して、同じ名前に集中しない傾向は1950年代後半から始まり、1980年代後半以降、急速に強まっていることが見てとれます。動きが顕著ですから、ここには何かがあります。
このグラフを掲載しているBBCの記事では、個人主義の浸透という見方を紹介していますが、それほど簡単ではないようにも思います。ここに至って米国民の個人主義が急速に進んだことを例証する事実なんて他にありますかね。
仮に米国がそうなのだとしても、それに意味があるのかどうか考えることを放棄して、周りを気にして、みんな揃って屋外でもマスクをし、みんな揃って自粛をし、みんな揃って外出を控える日本で個人主義が浸透しているとは到底思えません。
じゃあなんなのかと問われると私もわからないですが、いくつかの国で起きている現象として、「ジェンダーニュートラルな名前をつける」という傾向があって、キラキラネームの主たる理由ではないにせよ、マイナーな理由のひとつとして挙げられるかもしれない(これとはまた別の、米国で名前が多様化している理由のいくつかははっきりしていて、これについては以降見ていきます)。
※2014年4月11日付「BBC」掲載「Does a baby’s name affect its chances in life?」 名前が人にどう影響するのかの研究をさまざま取り上げた記事で、このグラフはそのひとつ。この研究はジーン・トゥウェンジ(Jean Twenge)という社会心理学者によるもので、多数の著作を出していますが、名前については本にまとまっていないようです。
まずは自分の改革から(by与謝野晶子)
これだけ「男らしさ」「女らしさ」を否定する人が多い中、「男らしさ」「女らしさ」を強調する名前を避ける親はいるでしょう。
とくに「男らしさ、女らしさの押しつけをやめよう」「クオータ制を導入しよう」「“奥さん”“家内”“主人”という言い方は差別だ」なんて言っている人が、自分の娘に花の名前をつけたり、「子」をつけたり、息子の名前に「介」「男」「勇」「剛」「武」なんて漢字を使っていたら、「人のことをとやかく言う前に、まずは自分の心のありようを問い直せ」と言いたくなります。
そこまで言う人たちは自分の名前にもジェンダーの偏りがある場合は改名した方がいいと思います。戸籍変更は面倒だし、認められないこともありますが、本名と違う名前を使うのはたった今でもできること。
(残り 1158文字/全文: 2776文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ