松沢呉一のビバノン・ライフ

さよなら、アップルデイリー(蘋果日報)—その無念を共有し続けたい-(松沢呉一)

ナチスのプロバガンダに見る「被害者の強調」—「武漢肺炎」という言葉[6](最終回)」からゆるくつながっています。

 

 

アップルデイリー活動停止の悔しさ

 

vivanon_sentenceナチス・シリーズの合間に入れるものとして、ボツ復活シリーズを始めたら、ついついそっちに熱中してしまって、ボツ記事復活がメインになってます。

ボツ記事復活シリーズを30本以上出したので、この辺で合間に何か書いておくかな(笑)。

アップルデイリー(蘋果日報)」の活動休止はあまりに悔しい。

 

 

 

香港の人たちの悔しさは私の百倍くらいか。もっとか。

「アップルデイリー」を使うこともよくありましたが、私はどちらかと言えば「立場新聞」の中継や記事を使ってきました。「立場新聞」は新興のネットニュース・サイトであり(中国語の「新聞」はニュースのことで、紙の新聞は「報紙」)、規模が小さい分、懸命さが伝わってくると言いますか。

対して「アップルデイリー」は紙の新聞がメインで、民主化支持の新聞が消えるのは決定的な意味を持ちます。ネットニュースがあればいいとはなりにくい。

相対的に力が落ちているとは言え、日本においてもテレビや紙媒体はいまなお空気みたいなものを作り出す力があります。民主化を求める香港の空気はこれでさらに後退しましょう。

 

 

「武漢肺炎」という言葉を名目とした思想統制が進む香港

 

vivanon_sentence「アップルデイリー」活動休止にともなって、サイトも非公開となり、お知らせページだけになって、貴重な民主化の記録も見られなくなってまいました。維持するにも金と人が必要ということかもしれないですが、香港の公安は記事をもとにさらに逮捕してくるかもしれないので、その対策もあるのかな。どのみちすべて当局は保存してましょうけど。

SSを撮っていたものがあるので、いくつか紹介しておきます(リンクは元のURLで、クリックしてもお知らせページに飛びます)。

香港ではこんなことになっています。

 

 

2021年6月9日付「蘋果日報」より

 

 

これは嶺南大学自治会がワクチンに関するアンケート用の一斉メールの中で「武漢肺炎」という言葉を使用したため、学校当局が問題視して回収を命じ、学生が反発しているという内容。

完全な言葉狩りであり、思想統制です。「武漢肺炎」という言葉は香港においては弾圧のワードであり、抵抗のワードです。

「武漢肺炎」という言葉」シリーズで説明したように、この言葉は「使わない方がいいかもね」という程度のことは言えても、これ自体が差別用語のはずがなく、差別との関連も密接とは言えず、禁止するほど強度はない。中国政府の責任を追及する意図で使うのは許容範囲です。

差別性があるというなら、より好ましい用語は「中国共産党肺炎」「中国共産党ウイルス」ですが、それもこれも中国政府は許さない。

 

 

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