松沢呉一のビバノン・ライフ

喫煙者は新型コロナに感染しにくい事実—そうしないではいられない人々[3]-(松沢呉一)

数十年ぶりに解決したトゥレット症候群の謎—そうしないではいられない人々[2]」の続きです。

 

 

喫煙者の方が新型コロナに感染しにくい

 

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煙管から紙巻き煙草への移行と母性保護の影響—時事新報社刊『たばこ』(昭和6年)より[下]」に、こう書きました。

 

平野亮平専売局長官はその立場から、タバコの歴史についての概論を語っていて、1665年にロンドンで疫病が流行って全市人口の3分の1が死んだ際に、煙草を吸っている人は感染しなかったため、小学生にまで煙草を強制的に吸わせたという話をしています。これが本当だったら面白いのに。

 

1665年から翌年にかけてロンドンで流行った疫病は腺ペストであり、こちらにタバコは予防薬とされていたという話が出ています。ペストはその感染経路から敗血症型ペスト、肺ペスト、腺ペストに分類され、腺ペストはリンパ腺から感染するもの。

これを読んだ数日後、新型コロナでもそういう話が出ていることに気づきました。

 

2020年7月31日付「プレジデント

 

飯島勲・内閣官房参与(当時)による原稿で、飯島氏はこう書いています。

 

世界各国で、感染者における喫煙者の割合が一般人口の習慣的喫煙者の割合(喫煙率)よりもかなり低いという発表が相次いでいる。例えば、喫煙者率13.8%の米国で感染者7172人を対象に実施された調査では、喫煙者数は96人(1.3%)に留まっている。明らかに少ない。別の研究チームによる4103人を対象とした調査でも、212人(5.1%)である。こちらも少ない。

米国の医学誌「ニューイングランド医学ジャーナル」に発表された論文には、中国での感染者における喫煙者の割合が掲載されていた。中国では感染者1085人中の喫煙者の割合が12.6%であり、中国の喫煙者率27.7%の約半分という結果だった。比較対象の一般人口の喫煙者率を調査したのがWHOというのが皮肉ではある。このほか、フランス、ドイツ、韓国でも喫煙者率よりも、感染者中の喫煙者の割合は低いという調査結果が報告されている。

これらの調査を行った国の中でも、フランスでは、新型コロナウイルス感染症の予防や治療にニコチンが利用できるかについて、臨床試験が始まることになったという。

パリのピティエ・サルペトリエール病院の調査では、入院患者343人に対して、喫煙者は15人と4.4%だった。フランス全体の喫煙者率32.9%に対して圧倒的に少なく、研究チームは、この結果は統計的に有意であるとして、喫煙者は感染から守られると結論づけた。

 

 

ホントかよ。と思って調べてみたのですが、そういったデータが出ているのは事実でした。

 

 

これ以降も同様の論文が出ている

 

vivanon_sentenceここには英国が含まれていないですが、以下は今年3月に発表された英国の論文。

 

 

 

David Simons, Lion Shahab, Jamie Brown, Olga Perski「The association of smoking status with SARS-CoV-2 infection, hospitalisation and mortality from COVID-19: A living rapid evidence review with Bayesian meta-analyses (version 11)

 

 

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