松沢呉一のビバノン・ライフ

タバコを吸わないではいられない人々の特性—そうしないではいられない人々[4]-(松沢呉一)

喫煙者は新型コロナに感染しにくい事実—そうしないではいられない人々[3]」の続きです。

 

 

 

禁煙したことの副作用か?

 

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銭湯までの非公開禁煙トーク・イベント—高円寺パンディットで禁煙を完成させる計画[中]」に、禁煙したメリットを書きましたが、デメリットもあります。禁煙鬱がその筆頭です。

禁煙鬱については検索していただけると多数の記事が出てきますが、しばしば「喫煙習慣が鬱を招く」という論調になっています。タバコが原因なのだと。喫煙者と非喫煙者を比較して、非喫煙者より喫煙者の方が鬱を発症する人が多いといった調査がその根拠になっているのですが、これだけでは決定できない。

鬱は脳内伝達物質の不足から起きるとも言われます。ニコチンはアセチルコリン等いくつかの物質の代わりになります。だから気分がよくなるのは当然。頭の働きがよくなったような気になるのも当然。

ところが、ニコチンが常時提供されるようになると、それらの伝達物質は必要がなくなって、脳内で製造されなくなるのです。体内で作る物質よりニコチンは伝達効果が強いためでしょう。ニコチンが代用になっている限りは問題がない。つまりタバコを吸い続けている限りはいいのですが、禁煙するとすぐには元通りに作られず、脳内伝達物質不足の状態になって禁煙鬱になります。これは伝達物質が元通りに作られるまで続きます。

「タバコは悪」というスタンスの人たちはこれらの事実から、「もともと作られていた脳内伝達物質が得られないようにしたタバコが悪い」となるわけですが、脳内伝達物質が十分に供給されない人、つまり鬱になりやすい人がタバコを快とし、常習しやすいのではないか。この人たちはタバコをやめても元通り脳内伝達物質不足になるだけですから、禁煙鬱が延々と続き、事実、禁煙鬱が治らないと書いている人がいます。

この人たちは喫煙をしていなくてもそういう状態になった可能性があるのです。むしろタバコを吸っていた期間の方が鬱から逃れられたのかもしれない。ニコチンを吸っていてもなお足りなくて鬱になる人もいるのでしょうけど、一定改善されている可能性があって、こういった欠陥を抱えている人たちを救済するタバコの税金を異常に上げてタバコを取り上げる社会はなんと酷薄なのでありましょうか。しかもそれを禁煙治療などとして金儲けに利用する医療関係者までいます。

前回見たように、タバコを吸っていると新型コロナに感染しにくいことを明らかにしたデータが多数出ていますが、そちらは注目されず、重症化しやすい点だけがクローズアップされるのと同じで、つねにタバコは否定的な面だけを取り上げられます。

バイアスを除いてフラットに見る必要がありそうです。

 

 

禁煙の支障

 

vivanon_sentenceすでに体からニコチンは抜けているので、なお私がタバコを吸いたいのは精神的依存だと書きましたが、正確には今も私は物質的依存かもしれない。

以前も禁煙鬱になったことがあって、禁煙を中止しましたが、今回もきわどい。

今回はタバコを吸いたい欲求がなかなか消えてくれない。1週間目に比べれば薄くはなってますが、以降はずっと横ばいで、1ヵ月を越えたあたりから再度高まっていて、胸の奥底から吸いたい衝動が湧いてきて、深呼吸をしてやりすごすことがたびたびで、また喫煙所に立ち寄ってますし、わさびやからしもなめてます。

ことによると、加齢のため、脳内伝達物質が作られにくくなっているのではなかろうか。だとすると、いくら待っても元通りにはならない。一生この状態かよ。

マゾ的には我慢するのは悪くないですし、好きなタバコのことを忘れていないのは嬉しかったもするのですが、具体的な支障が生じています。

休憩が歴然と増えてますま。タバコを吸っていると3時間でも4時間でも続けて原稿を書いていられるのに、タバコをやめたら1時間も続かない。飯島勲氏が言うようにボーッとする。

 

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