アイドルの唇と演歌の唇は通じている—唇が物語る[5]-(松沢呉一)
「フォークからニューミュージックへと唇は赤く染まった—唇が物語る[4]」の続きです。
演歌歌手の唇は赤い
前回確認した「フォークからニューミュージック」の流れは1970年代後半から1980年代にかけて完了し、やがてはJ-POPというくくりでまとめられていき、「スッピン風のメイク」となっていきます。しかし、あくまで「大きな流れとしては」であって、例外は多数あります。
この流れとあんまり関係がないように見えるのは演歌です。演歌歌手は赤い口紅を塗っている人が伝統的に多く、今も多い。
美空ひばりも、とくに和服の時は口紅を赤くした可能性があるように、和服と紅は相性がいい。戦後は着物が普段着ではなく、よそ行きの服装になっていきますから、「正装=化粧」という法則からも口紅をするのが適切という感覚も出てきたろうと思います。
そこを踏まえて、演歌の方々をざっと見ていきますが、ここまでと違って、演歌系は思い入れってもんがあんまりないので、飛ばし気味でいきます。
演歌歌手のわりに都はるみは赤い唇のイメージがなかったのですが、いくつか動画をチェックしたら、ケースバイケースで、赤かったり赤くなかったり。
以下は赤い。
改めて聴くと、都はるみの歌って、ムチャクチャ癖が強い。カラオケで演歌を歌うのがうまい人でもなかなか真似はできないでしょう。今までこんなに興味をもって聴いたことがなかったですが、ちょっと好きになった。
ああ見えて水前寺清子は赤くしていたような記憶があったのですが、確認してみたらやはり真っ赤です。そのことを記憶していたのは「あのキャラなのに」ということがあったのかもしれない。
1991年のテレビ番組。長いですが、冒頭で紅を差しているところがよく見えます。
水前寺清子は色気を売りにした人ではないですから、和田アキ子の口紅と位置づけは同じか。人様の前で歌う以上は正装をする。正装をする以上は化粧をするのが礼儀って感覚だろうと想像します。
藤あや子と坂本冬美も赤い
次の世代を見てみましょう。
いつの映像かわからないですが、藤あや子の「曼珠沙華」。
これは曲のせいでもあるのですが、真っ赤です。
坂本冬美はステージでは真っ赤。ステージの方が化粧が濃くなり、口紅が赤くなる。
なぜ男はふんどし一丁でいいのかまで考えさせる映像です。
繁体字の中国語テロップがついていますが、演歌は台湾の人が投稿しているものが多いのです。
必ずしも赤くない演歌歌手たち
続いては、つねに赤いってわけではない人たちです。
マイクが邪魔で見えにくいですが、長山洋子はこの曲では赤い。しかし、曲によっては赤みが薄いです。
サムネイルの写真でも赤みがありまぜん。
(残り 2092文字/全文: 3561文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ