ハルキウからロシア軍敗走にともなって国内でも批判が噴出—今のところ信憑性は薄いけれど、プーチン爆殺未遂説も-(松沢呉一)
祝・ハルキウ州全域奪還
ロシアのウクライナ侵攻が始まってから毎日報道をチェックし、国外メディアにも目を通すようにしてきましたが、8月末から一週間の夏休みの間は、初めてノーチェックになりました。国内報道は少しだけ見てましたが、ロシア・メディアやウクライナ・メディアはまったくチェックしてませんでした。
人類滅亡を加速させる干ばつや洪水についても珍しくノーチェックになってました。日課なのに。
そのくらい「聲の形」で頭がいっぱいで、アニメを観て、原作の漫画を読んで、聴覚障害者たちのYouTubeを観て、それについての感想を書いて過ごしてました。
その一週間の間に、表面的にはウクライナ情勢は大きな転換はなかったのですが、ここ数日、驚くようなことが次々起きていて、急転直下という言葉に相応しい。
すでに大きく報道されているので、詳しく繰り返す必要はないでしょうが、たったの2日から3日でロシア支配下にあったハルキウ州のほぼ全域とルハンシク州の一部をウクライナ軍が奪還。
ここまで南部戦線を踏まえて、「そうそう簡単に奪還はできない。1キロ進むにも何日もかかり、この戦争は消耗戦となって来年までもつれこむ」とされていて、私も、ここまでの戦いを見てもそう納得するしかなかったのですが、今回はそれを覆す急展開。すぐさまこれが戦争終結につながるわけではないにしても、数日で奪還完了したのですから、専門家と言われる人々の読みを軽く覆しました。
しかも、ロシアの重要な部隊が戦車や砲弾を大量に捨てて敗走していて、ロシア軍の損失は甚大であり、補給拠点のイジュームを失ったことで、ドネツク、ルハンシクなどの周辺地域を続々失う可能性が出てきています。今回のことで、ただでさえ低いロシア兵の士気がいっそう落ちているとの話も出てきています。部隊の再編前に、一気に畳み掛けると、さらにさらに奪還地域が拡大しそうです。
キーウ周辺からロシアが撤退した時に残されたブチャなどでの虐殺跡がハルキウでも再現されつつあるのが怖いですけど、ロシアから奪還しない限り、こういうことが続くのです。
BBC、仕事が早い。また私は泣きそうです。
体制内からの批判も
すべてはウクライナ軍の作戦通りだったようで、これを予想していた西側メディアは皆無。米国には通知していた、あるいは米軍からの提案だったようですが、見事に情報をコントロールしてました。
周辺にウクライナ軍は部隊を配置していたのですから、ロシア軍は衛星やドローンによって察知していてもよさそうですが、周辺地域には障害物が多くて、衛星で察知されにくく、部隊を分散させて待機させていたようです。そもそもロシアの部隊は東部から南部に移動させているので手薄になっていることを米軍は察知していたわけですから、ロシアは情報収集能力や解析能力が弱いってことでしょう。
南部戦線はそれ自体意味がありつつ、今になってみると、クリミアでの連続爆破はロシア軍を引きつけるための陽動作戦だったことは間違いなさそうです。何かおかしな動きだな、くらいのことは思っていましたが、まさかこのためだとは思ってもいませんでした。
その点、ダリア・ドゥーギナ爆殺事件は、仮にウクライナ軍の工作隊がやったのだとしても、この作戦には関係がなさそうです。警察が警戒態勢に入ることはあれども、軍は関係ないですから。おそらくロシア国内のグループによるもので、反体制派ではなく、体制内の対立が反映されたものという見方がいよいよ信憑性を帯びてきました。
そういった体制内対立が激化しているらしきことが次々と表面化しています。
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