キリル・ストレモウソフ傀儡副知事はただの事故死の可能性が高そう—ドローンの度重なる攻撃から生き延びたロシア兵-(松沢呉一)
キリル・ストレモウソフ傀儡副知事は誰に殺されたのか
ヘルソン市奪還はほぼ完了。つっても、ロシア軍が破壊した街、家を復旧するのは長い長い時間が懸る、殺された人々は二度と元通りにはならないですけど、ロシアの非道が一部であれストップできたことはめでたい。
「ロシア軍はヘルソンから撤退—ロシア傀儡ヘルソン州政府の副知事が自殺か?」で取り上げたキリル・ストレモウソフ傀儡副知事の死は、英米メディアが報じ始めて間もなく見てすぐに「ビバノン」に書いたため、事故の状況や、その原因について詳しく言及したものは見ていなかったのですが、その後出てきたものをいくつか読みました。
ヘルソンのパルチザンがキリル・ストレモウソフをブラックリストに入れていたと指摘しているものがありました。ロシア軍が撤退しなくても遅かれ早かれ暗殺される運命だったようにも思えますが、クレムリン批判を始めて以降は利用価値がでてきて、その上、ロシア軍撤退という局面に至って、わざわざ殺しますかね。逮捕して法に則って刑務所に入れればいいのです。
この時の優先順位として高位に来るとは思えないのですが、ロシア軍撤退に伴って、キリル・ストレモウソフも逃亡するかもしれないので、先手を打って殺した可能性もあるか。
また、ウクライナ軍の一部は、彼がクレムリン批判を始めていたことから、逃げるついでにロシア軍が殺したとの説を主張しています。ロシア軍としても撤退し損ったら、自分らが殺されかねない状況で、いかに裏切り者としても、キリル・ストレモウソフを殺すことを優先するかなあ。
とは思うのですが、戦争という特殊な環境の中でも、とくにバタバタな慌ただしい状況ですから、通常では考えられないような衝動的行動をとってしまう人たちがいてもおかしくはない。キリル・ストレモウソフ自身が衝動的に自殺した可能性もありましょうし、法に乗っ取らなければならないのに、ウクライナ軍の中に衝動的に殺してしまったのがいて、それを事故で処理した可能性もあります。
結局のところ、裏をとることが困難なので、なんでもあり。そういうことなら、生まれてからすぐに振り回された恨みを晴らすために娘が殺したという説でも提出しておくかな。
✳︎2022年11月10日付「Star hit」 ロシアメディアに掲載されていたストレモウソフ一家
死亡した現場の写真や運転手の証言を確認する
実は、ロシア・メディアは死んだ現場のことも報道してました。私が気づいていなかっただけですが、キリル・ストレモウソフが死んだ日に「RT」などが事故現場の写真を出していました。ロシア・メディアは事故としか報じていません。これがロシアの公式見解です。
運転していたのはキリル・ストレモウソフではなく、運転手は無事だったことも報じていました。その運転手によるとと、猛スピードで突っ込んできたトラックを避けようとして車が横転したとのこと。急ブレーキと急ハンドルの合わせ技でしょう。
もしロシア軍が殺したのだとすると、裏切り者に対する制裁であり、警告や教訓とするためには、キリル・ストレモウソフがクレムリン批判をした裏切り者であることを説明しないと効果がない。大多数のロシア人にとって、キリル・ストレモウソフはクレムリンに取り入った小物の一人でしかないわけですから、そんな背景は知らないはずです。しかし、ロシア・メディアはそれについては触れてません。
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