松沢呉一のビバノン・ライフ

ロシア人の亡命申請に苦慮するフィンランド—国外脱出したロシア人たちの苦渋[7]-(松沢呉一)

エルドアン再選とロシア人のビザ発給を厳しくし始めたトルコ—国外脱出したロシア人たちの苦渋[6]」の続きです。

 

 

フィンランドのロシア人対策

 

vivanon_sentenceロシアでは「いつまた動員令が発せられるのか」という恐怖が広がっている状態です。しかし、徴兵令の改正により、以前のようにすっとぼけて国外に出ることができなくなったため、徴兵の通知が来る前に国外に出る人たちが増えています。すぐさま徴兵逃れの国外脱出に適用される内容ではないながら、当局がパスポートを取り上げることができる法改正も進んでいます。

その上、近隣諸国がロシア人の受け入れを厳しくしつつあるため、反プーチン派・反戦派にとっては、国内国外ともに環境が悪化しています。

フィンランドはかつてロシア帝国の一部だったことがあるため、その頃からのロシア人の子孫が住んでいて、以降、ロシア革命時やソ連崩壊時などに多数が流れこんでいるのですが、ロシア語話者は7万人、国民の1.3パーセントに過ぎません。

このロシア語話者たちのうち、フィンランド語を話せない人は圧倒的に少ないでしょう。フィンランド語を話せないと仕事を探せず、生活できない状態であれば、言葉を覚えますよ。

しかし、観光客に言葉を強いることはできないので、ウクライナ人がいるところでも、平気でロシア語を話すロシア人観光客を閉めだしたわけです。現にロシア人観光客が多いということもありつつ、この背景にはロシア人を嫌う国民が多い事情も関わっていそうです。

※2007年3月11日付「HELSINGIN SANOMAT」 フィンランドメディアです。フィンランドではロシア人に対する反感が飛び抜けて強く、フィンランド人の62パーセントがロシアに否定的であることをギャラップが明らかにしています。上からフィンランド、ドイツ、ポーランド、デンマーク、エストニア。各国とも、今はもっとロシアに対する否定的評価が増えているはず。エストニアは、ロシアに肯定的感情を抱く人が多くて、34パーセントが肯定的。この数字はヨーロッパでは抜きん出て高いのですが、もっと高いのはラトビアで、36パーセント。両国ともロシア系住民が多いため、それが数字に反映されていると解説されています。ラトビアであれば25パーセントくらいはロシア系ですから。フィンランドでは米国に対する反感も強くて、56パーセントが否定的。米露とも嫌いというより、外国に対する警戒心が強いと書かれています。

 

 

亡命申請の扱いに苦慮するフィンランド

 

vivanon_sentence昨年、ロシアからフィンランドに移住した人の数は6千人程度。ジョージアやラトビア、トルコに比べると、うんと少ないですが、人口550万人の国としては無視できる数字でもない。日本で言えば10万人以上になりますから。

ソ連崩壊時でも、ロシアからの居住者は5,500人だったので、その時よりも多いのです。

さらに、すでにフィンランドに来ているのに、移住した人にカウントされていない人たちがいます。亡命申請を出していて、結論が出ていないたちです。

フィンランド移民局では、これまでに千人以上の亡命申請を受けていて、その対応に苦慮しています。

すでに徴兵の通知が来ている人たちや脱走兵は原則亡命を認めていたのだと思われますが、なお方針が決定していないのは、「徴兵されてはいないけれど、徴兵される可能性がある」という人々の亡命申請です。ほとんどは若い男でしょう。

※2023年5月21日付「ILTA SANOMAT」 フィンランド・メディア。数字はこの記事を参照しました。この記事では、このロシアが次に刑法改正で目論んでいる「ロシア恐怖症(RUSSOPHOBIA)禁止法」も取り上げています。以前からロシアはロシア批判をまとめて「ロシア恐怖症だ」と批判していて、それを法制化するようです。たとえば「ジョージアやモルドバを次は侵略するぞ」と言えば犯罪ってことでしょう。

 

 

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