入管法改正についてこれまで一度も触れてこなかった理由—「外国人をどう受け入れるか」は本当に難しい-(松沢呉一)
あしやさんの帰化申請が認められず
これは意外な結果です。
少なからぬYouTuberが帰化をしているなか、まさかあしやさんが見送りとは。
国籍法の条件にはないのですが、収入も立場も不安定ということなんですかね。
第五条 法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。
一 引き続き五年以上日本に住所を有すること。二 十八歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。三 素行が善良であること。四 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。五 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。六 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。
安定した会社の社員じゃなきゃいけないとは書いていないですが、四号から類推することができます。
毎年ビザの書き換えをするのは面倒ですし、とくに問題がないとしても、今回は大丈夫だろうかと不安になるものです。帰化が不可だとしても、せめて3年のビザを発行してくれてもいいと思うのですが、あしやさんが1年のビザしかとれないのも、同じ理由なんですかね。
私の知人でも永住権を目標にして日本で頑張っているのがいますけど、永住権は帰化より時間がかかり、来日してから最低で10年かかります。公言していなかったりもしますが、20代で永住権を得ているYouTuberだと、たいてい日本人と結婚してましょう。留学生として来日して就職し、その間のどこかで結婚する人たちだけでなく、インターネットで知り合って、結婚前提で来日する人もいます。
これだと来日から最短3年で永住権を得られます。ちょっと前に説明したように、結婚して3年経つと自動的に永住権を得られるわけではなく、改めて申請が必要ですが、未婚に比べると明らかに有利です。
日本人と結婚して、子どももいるのに、ビザの更新をしなければならないのはたしかに理不尽ではあって、永住権をスムーズにとれるようにするのは合理的ですが、これを簡略化すると、偽装結婚がしやすくなります。
こっちを立てると、あっちが立たず。
入管法改正に賛成も反対もしてこなかった理由
永住権や帰化について考えると、あるいは難民や移民について検討すると、「もっとゆるめてもいい」と考えはするし、あしやさんが帰化できないのは納得しにくいのだけれど、どこをどうしちたらいいのか拙速には決められません。
それを考える時に参考になるのは、難民や移民を多数受け入れている国々です。実際、「ドイツでは〜」「北欧では〜」というフレーズはよく見ますが、それによって何が起きているのかまで見据える必要があります。
現在のドイツで、ユダヤ人を迫害している最大グループはネオナチではなく、ムスリムであることを知った時はショックでした。「多文化共生」を掲げて、「ムスリムを差別するな」といった人々が招いたのは、猛烈な差別集団だったというオチ。
これによって、排外主義も高まってしまいますが、「だから、もう入れない」ではない方法が模索されていて、そこまで検討しないと、十全に他国を参考にしたことにはなりません。そこまで検討できていないため、私はこれについての答えをまだもっていません。
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