ロシア人が米国に移住しようとしても、強制送還されるのが関の山—国外脱出したロシア人たちの苦渋[14]-(松沢呉一)
「インドネシアではロシア人入国制限の動き—国外脱出したロシア人たちの苦渋[13]」の続きです。
ロシア人留学生が溺死
ロシア人留学生が仙台の海で亡くなったというので、 日本で脱国ロシア人の救援活動をやっていたため、FSB に消されたのかと思いました。
裏切り者を狙うように訓練したサメに襲われたわけです。なんてことはなくて、どう見ても単なる事故ですが、日本にまで来て溺れ死ぬのは痛ましい。
ここで気になったのは年齢です。26歳。自国の大学を出てから留学する人もいますし、社会に出てから大学に入る人が多い国もありますから、さしておかしくはないですが、もしかすると、召集から逃れるために留学したのかもしれないと思いました。
ロシアでは、法改正によって、召集されてから国外に出るのは困難になっています。非合法ルートで脱出するしかない。国外に出られても受け入れる国が減り、十分な理由がない限り、入国できたところで観光ビザしかとれないですから、長期で滞在することはできず、結局、違法滞在となって、強制送還されるだけです。
どこに行っても収入を確保できるプログラマーや売れっ子ミュージシャンを除けば、国を捨てるには時間をかけて準備するしかなく、もっとも確実なのは、学校に入って、就学ビザをとることです。国によっては、あるいは学校によっては授業料無料ですから、生活費を確保するだけ。時間や手間はかかりますが、若ければこの方法が堅実です。
ロシアからすると、日本は生活費が高いですが、上限までバイトをすれば生活はできますから、渡航費と入学金と授業料を準備すればいい。
これで数年は安泰。その間に日本語を覚えて、仕事を探して、就業ビザを取得して、しかるのちに永住権をとれば完了。
ロシア人を強制送還すべきか否か
永住権にせよ、難民(亡命)にせよ、日本よりずっとハードルが低い国や、生活費がかからない国もありますから、たんにロシアから出たいだけなら、日本以外の国に行きます。よって、日本に来ている留学生の中で、徴兵逃れが主たる目的である率は相当に低いかと思いますが、中にはもともと日本に興味があって、この機会に決断した人もいるでしょう。問題なし。
学生のうちに戦争が終わって、ロシアに帰国できるかもしれないので、徴兵逃れのためだなんてやたらと公言しないと思いますが、このタイミングで日本に留学したロシア人の何人かに一人は、サブの目的だとしても、徴兵逃れや、白い紙を出すだけで連行される国から逃れたいのがいるかと思います。
もともと日本に関心があるのですから、積極的に日本語を覚え、日本という国を理解することが期待でき、こういう留学生は積極的に受け入れるべきです。
ロシア人が少ない日本にロシア人によるアンダーグラウンド・コミュニティみたいものが存在するとしたら、飯倉のロシア大使館を拠点としたスパイ網であり、それ以外にはほぼ存在しないでしょう。そのため、サポート体制がなく、観光ビザで入国して、不法滞在するのはほとんどいないと思いますが。仮にいたとして、政府はどうすべきか。
(残り 2115文字/全文: 3480文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ