現実味を帯びてきたロシア敗北の波及—小数民族とロシアの分裂[前編]-(松沢呉一)
※今回と次回は2ヶ月ほど前に書いてあったまま、出すタイミングを失っていたものです。時制は書いた時のままです。
ロシア分裂のシナリオ
おもに英国発だと思いますが、ここに来て急に「ロシアは分裂する」という議論が高まってきてます。今までにも出てはいましたが、具体的にどう分裂するのかまでが盛んに論じられるようになってきたのは最近のことだと思います。
「ビバノン」を読んでいる方々は「やっと松沢の時代がきたか」と思っていることでしょう。
以下の22分あたりから、この説を取り上げています。
ここでは3つの説を紹介しています。
ひとつはウクライナのキリーロ・ブダノフ(Кирило Олексійович Буданов)情報総局長による「ロシアと中央アジア共和国と中国支配地域の3つに分裂する」という説。
ひとつはポストロシア自由民族フォーラム(Форум свободных народов ПостРоссии)のオレグ・マガレツキーによる「41の国に分裂する」という説。各地のリーダーたちとコンタクトをとった結果だと言ってます。これは暫定であって、どうなるかは未確定だとも。
このポストロシア自由民族フォーラムは、私はまったく信用していないイリヤ・ポノマリョフが中心人物の一人で、この団体も今のところ信用してません。
ひとつは英国・王立国際問題研究所(Royal Institute of International Affairs)のティモシー・アッシュ(Timothy Ashe)による、ロシアが負けたあと、「15から20に分裂する」との説。ロシアは21の共和国(ロシアの主張ではクリミアやドネツクなどを入れて24)・195の民族から成り立っており、15から20という数字はまだしも妥当だろうと思います。
対して私は分裂するところまで予測していたのでなくて、少数民族が蜂起して内戦になるかもしれないというところまでですし、その可能性は現状では相当に低いと見てます。可能性があるとしても、3ヶ所くらいじゃなかうか。なのに、なぜここに来てそれが論じられるようになったのか。
さして根拠のない可能性のさまざま
ウクライナ軍が圧勝する以外に、プーチン政権が倒れるには、「ロシア軍内の反乱」「政権内の対立」「ロシア国民の蜂起」「少数民族の独立運動」といった要因が複合的に作用するしかなく、それぞれ少しずつ表面化しつつあることはずっと書いてきた通りです。仮にそれらによって、プーチンが死ぬようなことがあったとしても、それだけで戦争は終わらないですけど、ウクライナが勝利することをバックアップするくらいのことはあるでしょう。
ことによると、少数民族の多い地域での爆発や火災は、独立派のパルチザンである可能性もありますけど、それにしたって散発的なものであって、たった今、独立戦争ができるほどの力はないと断言していいかと思います。
ロシア軍にとっての後方、つまりロシア国内での不安定要因としての騒ぎを起こせるのが関の山。重要ですけど、それが独立に結びつくようなものとはとうてい思えない。
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