松沢呉一のビバノン・ライフ

インドネシアではロシア人入国制限の動き—国外脱出したロシア人たちの苦渋[13]-(松沢呉一)

ポーランドは兵役逃れのロシア人の入国を拒否—国外脱出したロシア人たちの苦渋[12]」の続きです。

 

 

インドネシアと日本、中国、ロシア

 

vivanon_sentence現天皇初の親善訪問はインドネシア。

 

 

インドネシアが招待したのは、高速鉄道で中国を選んで以来ギクシャクしている感もある日イ関係の修復という意味合いがあるのかとも思いますが、もとはと言えば両国の関係は古くて深く、日本としても仲良くした方がいい国ではあります。

ただ、ジョコ・ウィドド政権は中国とベタベタなのは明らかです。国内からも批判は出ていますが、インドネシアにとっては最大の貿易相手ですから、もはや頭は上がらず、今後も警戒は解けない国かと思います。

その点、ロシアとの貿易はそれほど多くなくて(インドネシアにとっては26番目)、ロシアのウクライナ侵攻のあと、昨年3月に名指しをせずにロシアを非難していますが、軍事的つながりは強く、多数の武器を購入しており、共同演習も実施している関係からか、煮え切らない態度を続けているようにも見えます。

この姿勢は、ロシアを脱出する人々にとっては好都合です。ヨーロッパ各国に移住しにくくなったロシア人たちは中南米に移動するようになっていたり、アジアだとタイやインドネシアが選択されていて、戦争以来これまでに10万人程度のロシア人がインドネシアに入りました(正確な数字が見つからないので、私の概算)。

対してウクライナ人は、戦争開始以降の総数で1万人台と思われます。いかにロシア人が多いかわかります。

インドネシアは少し特殊で、事前にビザを取得する方法とともに、多くの国の国民には、到着ビザ(VOA/Visa on Arrival)が認められていて、空港に到着してから申請して観光ビザを発行してもらうことができます(6ヶ月以上有効なパスポートと出国用の航空券を持っていることが条件)。

この扱いが戦争以降も維持されていたため、ウクライナ人やロシア人がいったんインドネシアに渡航することがあって、このビザで30日間滞在が可能(事前に申請して取得したビザだと180日間有効)、さらに30日の延長も可能ですが、延長は一回こっきり。その間に別の国に移動すればいいわけですが、そのまま違法滞在するロシア人がいて、この人たちが問題視されています。

※2023年3月18日付「CNN」 バリ島でのトラブル(の始まり)がまとめられています。

 

 

犯罪者になって強制送還されるか、違法滞在で強制送還されるか

 

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とくにバリ島がロシア人たちの扱いに苦慮しています。バリ在住のロシア人かウクライナ人で、情報提供者がいるのではないか思うのですが、これについては「メデューザ」がよく取り上げています。

どこの国でも、多額の金を持っていたり、特殊技能を持っていたりして、継続して収入を得る保証がない限り、短期の観光ビザ以外のビザをとるのは難しい。どこにいても収入を得られるタイプのプログラマーを除くと収入を確保できないでしょう。

指名手配されていれば亡命の可能性がありますが、VOAによる観光ビザによるロシア人の入国が急増したのは昨秋の部分動員が始まってからで、ただの兵役逃れでは亡命は認められず、ビザが切れたら別の国に移動するしかない。

その金も尽きていると、違法滞留して、違法に働くしかない。働き口が見つからないと、窃盗でもするしかない。こういう犯罪も増えています。

 

 

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