プリゴジンを殺したのは本当にプーチンか?—念のために検討しておく-(松沢呉一)
プリゴジン死亡が確定
プリゴジンの乗った飛行機が墜落した報道を知った時、「本当にプリゴジンが乗っていたのか?」と疑問に思いました。プリゴジン自身がなんらかの思惑があって、自分が死んだことにする工作かもしれないので、肉片となった遺体の検死が行われないとわからんなと。
もし本当に死んだのであれば、「プーチンにやられたか」との当然の推測に至りましたましたが、これも「時間を置いてからじゃないとわからんな」と思いました。
やっと27日に、ロシア政府の正式発表がありました。
爆薬を仕掛けられて空中で爆発したことはほぼ確定していて、そんなことができるのはプーチンしかいないでしょうけど、なお疑問を口にしている人もいます。ベラルーシのルカシェンコ大統領は、「やり方が素人だ」として、プーチンによる粛清説を否定し、真犯人を知っているような口ぶりです。
つってもルカシェンコですから、本当のことを言うとは思えないですが、やり方が稚拙という指摘は納得できます。これまでのプーチンによる暗殺は、毒殺するか、銃による自殺に見せかけるかであって、暗殺であることを否定する余地がある方法をとってきたのに対して、今回はその余地がなく、何者かによって殺されたことまでは確定してしまいます。あとは「誰がやったか」ですが、当然プーチンが疑われますので、たしかにやり方として逃げ道がなく、国際的な批判を浴び、国内的な反発を呼びますから、いささか露骨すぎないかとは言えましょう。
その程度のことは言えるとして、プーチン以外の候補は、ワグネルの内部抗争くらいしか考えられず、西側のどこかの国や団体がロシア領内で飛行機に爆弾を仕掛けることは不可能。そう考えると、プーチンの粛清の可能性が95パーセント、ワグネルの内部対立の可能性が4パーセント、その他が1パーセントといったところじゃないでしょうか。
プリゴジン死去で緊張が緩んだベラルーシ国境
プリゴジンは、再度反乱を狙っていたとの説も出ていて、国内に混乱をもたらす存在としては期待するところがあったにしても、裏切り者はハンマーで頭を潰して抹殺してきたのがワグネルであり、その本質はプーチンとそうは変わらない。もしクーデターを起こしたら、ショイグやゲラシモフの頭をハンマーで潰して、プーチンは刑務所にぶち込んで、プーチン以上に強行な姿勢を見せたかもしれない。
西側にとっては怖い存在であり、とくにポーランドやリトアニアは、ベラルーシとの国境付近に兵を集め、ポーランド政府はNATOに核を配備することまでを求めていました。もちろん、ベラルーシに配備されたロシアの核兵器に対抗する抑止力としてですが、そのくらいポーランドはベラルーシにワグネルが常駐することで危機感を高めてました。
以下はプリゴジンが亡くなる直前の印WIONの報道。
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