松沢呉一のビバノン・ライフ

国外脱出したベラルーシ人たち—国外脱出したロシア人たちの苦渋[3]-(松沢呉一)

ロシア人が国外脱出するのは困難になってきている—国外脱出したロシア人たちの苦渋[2]」の続きです。

 

 

ロシア人はワグネルをどうとらえているか

 

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ワグネルがバフムト市内を制圧したと発表。

ロシアが以前から宣言していた成果がやっと実現したに過ぎず、郊外ではウクライナが攻撃を仕掛けて、バフムト市包囲網が着々と築かれていて、ロシア軍はここから動けなくなりそうなので、どっちが有利かは素人には判断できないですが、プリゴジンとしては自分の存在を十分にアピールできて満足でしょう。

3日前に公開された「ロシア人にインタビューしてみた」シリーズでは、そのワグネルについて聞いてます。

 

 

最後の2人はロシア名物アル中か?

言うまでもなく、数が少なく、そもそもロシアでどこまで本心を語れるかもあるので、データとしては使えないですが、参考までに「肯定・否定・ほか」は10対2対1で、ワグネル圧勝。

「ほか」の1名は、「ワグネルのことを公共の場では語れない」としていて、ということは否定的な考えをもっているのだとわかり、同様の理由でインタビューを断った人は多いでしょうが、大半の人が肯定的であろうことは十分に想像できます。

ワグネルを肯定するが、自分は行かない」という回答は「自分勝手」と言えますが、気持ちはよくわかります。「汚れ仕事」をやってくれているのだと。しかも、囚人が多いですから、その処分もできて一石二鳥。

 

 

お国のために死ねるか

 

vivanon_sentenceこれに続いて昨日公開されていた「ロシア人にインタビューしてみた」は、「お国のために死ねるか」。

 

 

「お国のために死ねるか」と聞いているわけではなく、「徴兵されたらどうするか」という質問です。

こちらは「自分自身が」ですから、回答は「積極的に従う/しょうがないから従う/従わない/ほか」が5対4対4対4で、拮抗しています。積極・消極を問わなければ、「従う」が圧勝ですが、徴兵法が改正されたことを踏まえてなお「従わない」と公然と答えたのが4名もいるのは驚きです。

つってもここまで書いてきたように、もう逃げるのはほとんど不可能。徴兵通知のメールが来てから、正規の方法で国外に出ることはできないので、それでも逃げようとするなら、友だちの家の地下か屋根裏に匿ってもらうか、誰も来ない山ん中で自給自足するか、非合法に国境を超えて亡命するしかない。

戦争しているとは思えない」と言っているのがいるように、都市部ではなおリアリティがないのでしょう。このインタビューは、4月26日・5月7日に実施となっていて、どちらがどうかわかないですが、モスクワとサンクトペテルブルクで別の日だと思われます。

実際、数字が違っていて、サンクトペテルブルクは積極的に従う人が5名いるのに対して、モスクワはゼロです。どちらかがクレムリンに対するドローン攻撃のあとですから、その影響が出ているのかも。それで奮起したのか、怖くなったのか、どっちだべ。

 

 

ヴォロネジで爆発

 

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国境沿いでは絶えず爆発・火災が続き、囚人やブリヤート人、タタール人などの少数民族が大量に死んでいても、大都市の住民にとっては遠いところで起きていることなのでしょうけど、4名が「従わない」と堂々と答えているのは、厭戦気分が高まってきていることの表れか。

数時間前にロシアのヴォロネジにある発電所近くで爆発、続いて火災があって、市内の一部では水道も電気も止まっていると、NEXTAが伝えてます。

 

 

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