松沢呉一のビバノン・ライフ

中国人の「中流難民」とウクライナ人の「補完的保護対象者」—入管法が改正されてよかった-(松沢呉一)

中国経済の停滞と国民の不満噴出」シリーズの続きですが、中国の話だけではないので、カテゴリーだけ残して、別立てにしました。

 

 

夢見る「中流難民」

 

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国外脱出が急増しつつある—中国経済の停滞と国民の不満噴出[後編]」に書いた「メキシコから米国に不法入国する中国人」の話をテレビ東京が取り上げています。

 

 

やはりここでも中流階級の国外脱出に着目しています。それが中心層です。共産党政府に対しての不満があるのは事実として、何の行動にも移していないのであれば政治亡命とは言い難い。内心そう思っているだけでいいなら、どんな人でも、政治亡命できてしまいます。

そもそも難民条約上の難民は「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者」であり、いかに困窮していても、「経済難民」は難民ではないわけですが、条約上の保護対象ではなくとも、「今日明日食うものにも困り、仕事を求めて国を出る人々」に手を差し伸べることはあっていいでしょう。

しかし、そういった「経済難民」に「中流難民」を含めることは無理があります。この番組に出ている例で言えば、住宅販売をやっている人物が「マンションは売れず、月給が日本円で4万円台から6万円台程度に減った」とあります。たぶん歩合給なのでしょう。地方の一人暮らしだったら、カツカツで生きていくことはできるかもしれないですが、都市部ではやっていけない。

中国では、解雇された人、経営していた店や会社が潰れた人がウーバーイーツ的な配達員をやる話がよく出ています。配達員が増えすぎて、朝から夜まで休みなく働いても10万円稼ぐのがやっとだったりするようです。古い建物で、風呂もシャワーもなく、トイレと台所は共用で安い物件がありますから、都市部でもやってはいけますが、いい生活を夢見ることはできません。

だから「中流難民」はそんな仕事をせずに、夢を見られる場所を求めて国を出ます。

渡航費やブローカーへの支払い、当座の生活費を合わせて、日本円で100万を超える金を持ち出しています。もっと金をかけている人たちもいっぱいいます。貯蓄があるわけです。

そこそこいい生活をしていた人々が、「今までのような豊かな生活をしたいので、入れてくだせえ」とやってきても、そんな人たちを入国させていたら、正規の入国条件やビザの意味を無効にしてしまいますし、無制限に人がやってきます。

 

 

「補完的保護対象者」の認定がスタート

 

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「中流難民」は、うまく入国できたとしても、トラブルを生じさせるリスクがあります。

特別な技能のある人であれば仕事を得られるとして、そんな人は正規で入国しやすいですから、不法入国する人の大多数は仕事を探すのが難しい。せいぜいカツカツの生活ができる程度の仕事しか見つからない。「今日明日食うものにも困り、仕事を求めて国を出る人々」であれば、それでも満足できるかもしれないですが、「中流難民」は満足しない。

米国への中国人留学生の半数近くが不正をして退学処分されるのは、「入学の際に不正をする中国人留学生は、単位を取れそうにないと不正をする」ためです。不法入国増加の背景には、米国が中国人の入国に厳しくなったことが背景にあり、ビザが取れず、「だったら不法入国だ」となり、不法入国する人たちは、入国できても、不満が生ずると法を無視する可能性が高そうです。

このような「中流難民」を助けるなら、香港やミャンマーの政治難民を助けるべきだし、難民条約の対象外である「戦争難民」を助けるべきです。

ということで、私は入管法(出入国管理及び難民認定法)改正に賛成でした。あの時の改正で実現した新制度によって、「補完的保護対象者」に認められたウクライナ人たちが出始めています。

 

 

 

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