コスプレーヤー潰しを狙う中国共産党—反イスラエル運動の背後にちらつく怪しい人脈[前編]-(松沢呉一)
浴衣で警察に連行された中国人コスプレーヤー
「姫カットを東洋起源とする韓国メディア・和服をアジアの伝統とする中国系団体—文化盗用とパクリ[13]」「自己実現のために「差別」「文化盗用」を利用する人々—文化盗用とパクリ[14]」で取り上げたボストン美術館を舞台にした「キモノ・ウェンズデー」妨害事件をより理解できるように紹介しようと思っていたのに忘れていた動画があります。
お馴染みSCMPの2022年の動画です。
彼女は蘇州のコスプレイヤー。この日も、日本料理店が多い飲食店街でアニメ「サマータイムレンダ」のコスプレをして撮影していたところ、浴衣を着ていたことで警官に怒鳴られた末に連行されました。
香港メディアのSCMPではこれ以上は書けなかったのかもしれないですが、さらに話は続きます。以下は2022年8月16日付「CNN」より。
5時間の取り調べを受け、「このことをSNSに投稿するな」と脅されて釈放されますが、彼女はこの経緯を微博に投稿します。「私は日本文化や欧州文化が好きだし、伝統の中国文化も好き。多文化主義が好きでアニメを見るのが好き。何かを好きなことは間違ってる?」「自分には着る自由や言いたいことを言う自由がないことがわかった」と書いていて、大きな反響を呼びます。
これに対して、彼女を非難するコメントとともに、彼女を支持するコメントも集まり、警察批判も高まったためか、この投稿のハッシュタグは削除対象になりました。
いかにも中国らしい愚劣さです。
この時の容疑は「騒ぎを起こした」というものですが、騒ぎを起こしたのは警察です。いかに無法治国家であっても、和服だけで罪を被せることはできなかったようです。
「治安管理処罰法」改正でコスプレーヤー全滅か
ところが、昨年、「治安管理処罰法」改正案の中に以下の条文が盛り込まれます(34条)。
公共の場所で中国人の精神を傷つけ、中国人の感情を傷つけるような服装やシンボルを身に着けたり、他人にそれを強制したりすること。
これに該当する行為には、最大5千元(日本円で10万円強)の罰金が課せられます。和服や日の丸、旭日旗はアウトってことです。韓国の左派も欲しがりそうな法律です。
和服だけでなく、コスプレ全体が対象になりかねないとあって、ネット民が反発します。中国でもコスプレは人気ですから。法学者からも「基準が曖昧すぎる」と批判され、中国の法律を公開しているサイトを見ても、まだ成立はしてないようです。
韓国政府が韓服のデザインや色にまで口出しするのも呆れますが、連行、罰金にまで至ると、イスラムの宗教警察と変わらない。
その一方で、中国系団体である「Stand Against Yellow Face」は「着物はアジアの伝統文化だ」として、「キモノ・ウェンズデー」を中止に追い込みました。
直接指令を受けているのかどうかは知らないですが、「Stand Against Yellow Face」が中国共産党の意向に沿ったものであることは明らかです。本人たちは意識していなかったとしても、共産党に媚びる発想が出てきてしまうのかも。
「Stand Against Yellow Face」のメンバーが、浴衣のコスプレ弾圧をする中国共産党に対して「アジアの伝統文化を弾圧するな」と抗議声明を出していたなら話は別ですが、自ら「アジアの伝統文化」を妨害したのですから、それもできないでしょう。
「Stand Against Yellow Face」が中国共産党とつながっているとするのは陰謀論のようであり、そう決めつけるには根拠がなさすぎですが、疑っておく必然性があります。
✳︎2023年9月7日付「REUTERS」 写真はコスプレとしていますが、ロリータですわね。どのみち、「治安管理処罰法」の対象
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