オーバーツーリズムは文化の違いを理解しないと解決しない—祇園の対策が無駄に終わる理由-(松沢呉一)
祇園の対策は決定的な効果をもたらさない
これはいろんな意味でダメダメです。
ちゃんと「花街」を「かがい」と言っていて感心です。「はなまち」が広く使われているので、もはや「はなまち」でも間違いではないでしょうが、正しくは「かがい」です。
ガイドはピンキリで、これだけ報じられて知らないなんてことは考えにくく、この程度はいいとなお考えているのか、注意することもできない気の弱い人間がガイドをやっているのでしょう。
教育をしっかりやるか、ルール違反を誘導したガイドや注意しなかったガイドにも罰則を与えるべきです。ツアー会社名や個人名を公開するだけでもいいでしょうし。
また、対策する側の意識も手ぬるいと思いました。現にこうやってルールを破るのが続出していても、罰金を取ろうとしていない。脅しでしかないのです。だったら、「注意されたら出ればいい」ととらえられます。
そもそも看板だけで「ここは入っていけない場所」と外国人に認識させるのは無理です。この中に出ている中国人の場合は気がついていても入ってます。それでも頭を下げて謝ってますから、まだまし。八坂神社で逆ギレした英人ガイドと客たちよりまし。
メルマガ時代に指摘した話。まだ築地に魚市場があった頃、マグロの競りを観光客が見学できるようになっていたのですが、「立入禁止」の表示があっても、観光客が中に入って、素手でマグロに触るなどの行為が多発したことが問題になったことがあります。
この時、立入禁止エリアを示しのは白線だけでした。貼り紙には各国語で注書きがあるとして、線一本で入ってはいけない場所だと認識し、そのルールを守ろうとするのは日本人くらい。ほとんどの文化圏では柵の類があってやっと日本人にとっての白線と同じ意味になります。
これはどちかがいいということではなく、空間認識の違いです。
中国の厳重な防犯意識
香港や台湾を含めて、中華圏では外と中を区切るためには幾重もの厳重な仕切りが必要です。清時代の建物が今もわずかに残ってますが、例外なく高い塀に囲まれています。その中に一族の家があります。町の単位でも区切りがあり、塀で囲まれています。国単位でも塀を設置し、壮大な万里の長城になります。
これらは外敵の侵入を防ぐ目的があるわけですが、こういった発想は今の時代にも残っていて、日本で言う「団地」の入口には必ず警備員がいます。日本でも大きなマンションの一階には警備員がいますが、そんな立派な建物ではなくても外に警備員が常駐していることがよくあります。
そこを通って、建物に入るのに鍵が必要。日本でも新しいマンションでは、建物に入る際に鍵や暗証番号が必要なことが多いですが、中華圏では昔から建物の入口で鍵が必要。昼間は不要なこともありますが。
また、各階に入るのに鍵が必要。当然、個々の住居に入るのに鍵が必要で、たいていの場合、二重扉です。つまり、家にたどり着くのに鍵が4つ必要。今では暗証番号や顔認証、指紋認証になっていることも多いでしょうが、チェックポイントが4つあるのが標準です。日本でもそういう物件はあるでしょうが、稀です。ほとんどの住宅は建物に入る際と、自室に入る際に同じドアに二つ鍵が付いていることがあるだけで、二重扉も珍しい。
そして、1階2階の窓に鉄柵があり、4階まであることも珍しくありません。
Yasuさんの以下の動画でよくわかります。
でも、Yasuさんは、防犯カメラが至る所にあるため、最近の建物に鉄柵はないと言ってます。私はあの鉄柵は長年の癖みたいなもので、防犯効果は半ば忘れられているのではないかとも思っていたのですが、防犯カメラでいいなら、純然たる防犯対策です。
(残り 2044文字/全文: 3711文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ