ヤマガタ野球通信

日大山形、山形中央にも死角あり!?/夏の山形大会・準決勝展望

明日7月21日(金)に行われる山形大会準決勝。鶴岡東を破って勢いに乗る山形中央、投打がかみ合う東海大山形、激戦ブロックを突破した日大山形、順当に勝ち上がってきた羽黒。4校2試合の展望を無料公開する。

■第1試合 山形中央VS東海大山形

プロ注目の「二刀流」武田陸玖が同点ホームランを含む3安打&完投勝利を挙げる活躍で第1シード・鶴岡東にサヨナラ勝利を収めた山形中央。日程的にも中3日空き、準決勝と決勝の間にも休養日が入ること、その他の投手陣の力量を考えると、優勝を狙うなら武田陸玖の先発が濃厚だろう。一方、東海大山形はコールド勝ちした準々決勝の九里学園戦はエース左腕・佐藤董哉が先発して5イニングで降板。同等の力量を持つ右腕・宗和奏斗は登板しなかった。宗和は初戦の2回戦に先発した後、3回戦も1/3を投げたのみ。休養十分で準決勝の先発が予想される。

東海大山形・宗和奏斗。

武田陸玖の存在や難敵・鶴岡東を倒した勢いから山形中央有利に思われる人も多いだろう。それは間違いではない。ただ、東海大山形の力も侮れない。宗和は130キロ台のストレートを丹念に低めに投げ続ける制球力があり、大崩れしにくい。そして佐藤はこれまでやや変則タイプのイメージがあったが、今大会に入ってストレートが最速135キロを記録するなど力強さを増している。鶴岡東戦での山形中央打線は武田以外の打者のヒットは4本。正直なところ、宗和と佐藤が本来の力を発揮すれば、山形中央打線が苦しむ可能性はある。東海大山形とすればランナーをためた状態で武田に回さないことが勝利への第一歩だ。

ちなみに東海大山形は投手だけではなく守備力も高い。特に高橋楓真、高田翔人、物部豪、鈴木貫太の内野陣はかなり仕上がっている。キーポイントはどれだけ攻撃陣が武田から点を取れるかだ。打線は選手がそれぞれの役割をきっちり果たしており、中軸の高橋、物部は打者としての能力も高い。武田との対戦も楽しみである。

山形中央は鶴岡東戦で失策4に捕逸1。記録に残らない守りのミスもあっただけに、思わぬところで武田の足を引っ張ることにならないか不安だ。優勝するならば、できれば投手・武田の負担を可能な限り減らしたいはず。そのためにも打線の奮起が望まれる。春まではやや物足りなさを感じた下位打線では石垣史穏の存在感が増している。それだけに、もっとやれる能力はあるはずの木村祐葵、渡邉聖翔の働きが勝利をたぐりよせるカギになるかもしれない。

武田が投打に本来の力を発揮すれば、山形中央勝利の可能性は高い。だが、東海大山形は初戦からベンチの雰囲気もよく、目立たないが不安点のなさでいけば4強の中では一番ではないか、という印象も受ける。宗和、佐藤のピッチング次第では接戦の可能性も十分ありえるだけに、注目の一戦となりそうだ。

山形中央・木村祐葵。

■第2試合 日大山形VS羽黒

初戦から難敵続きのクジ運の悪さで、序盤敗退の可能性もあった日大山形。さらに故障者も発生しているとみられベストメンバーを組めない状態が続いている。それでも酒田南にサヨナラ勝利するなど、選手層の厚さを背景に、一戦一戦しのぎにしのいで勝ち上がってきた。一方、羽黒は主力4人の投手に登板機会を与え、主砲にも一発が出るなど打線も好調。3試合連続コールド勝利で順当に勝ち上がってきた。選手個々のポテンシャルだけ考えれば日大山形有利に感じる。しかし、チーム状態、コンディションの差で現状、2チームは競った状態になっているかもしれない。

特に気になるのは日大山形の最速147キロ右腕のエース・菅井颯の疲労だ。初戦となった2回戦の山形学院戦、3回戦の酒田南戦といずれも好投。しかし、3回戦の終盤はややストレートの力は落ちている印象だった。それだけに中1日で迎えた準々決勝の山形城北戦は、できれば菅井を休ませたかったはず。実際に先発は2年生右腕の佐藤大清、2番手としてリリーフしたのも1年生右腕の本田聖だった。
しかし、2人が踏ん張りきれず、打線も前半、山形城北の先発左腕・玉虫輝來を打ちあぐねたことで、結局、5回から菅井を投入せざるを得なくなった。6回コールドで終わらせられるチャンスもあったが、それも逃し、最終的に菅井の登板は4イニング63球。途中で足をつるなど想像以上に疲労が出始めている印象だった。準決勝までの2日間で、どれだけ回復、コンディションを整えることができたが、準決勝の試合展開を左右しそうである。
投手陣の力量、試合後のコメントから感じ取れる「まず目の前の一戦」という荒木準也監督の姿勢を考えれば「まさか」という話だが、優勝までの道のりを考えて、菅井以外の投手が先発という可能性もゼロではないかもしれない。

一方、羽黒は秋春と期待を裏切ってきた右腕・柴崎優心が力量差のある相手とはいえ初戦で好投。右腕・鳴瀬羽空も春に比べて力強さが増してきている。実質的なエース格と思われる山田舞侑も3回戦で先発して無失点。準々決勝の登板はなかった。3投手ともコールド勝ちで目に見えるほどの疲労はないだろう。背番号1をつける佐藤大武も含め、準決勝の投手起用はコンディションの不安もなく、あらゆるチョイスができそうだ。とはいえ日大山形の打撃力は県内随一。当たりが止まっていた1番・清野隆之輔が準々決勝で本塁打を放つなど復調の兆しが見えたのも大きい。1人で抑えきるのは難しいことが予想できるだけに、序盤のビッグイニングを防ぐ先発の立ち上がりと継投のタイミングがポイントになるだろう。

日大山形・清野隆之輔。

羽黒の打撃陣は日大山形に比べると層の厚さ、全体的なポテンシャルでやや劣る。実際、春は菅井に完璧に抑えられた。しかし、調子を落とした菅井なら十分、捉える力はある。春に対戦経験があることも強みになるだろう。準々決勝では下位打線に思わぬ本塁打も飛び出すなど勢いもついている。3番・江崎仁、4番・野口大成は万全な菅井でも油断はできない存在だけに、1番・岡田優空、2番・宮下拓夢がいかに出塁できるかがカギになりそう。また、下位と上位をつなぐ9番・太田駿平は本来もっと上位でもいい打者。意外な働きを見せる可能性もある。

日大山形は菅井やスタメンを外れていた選手のコンディション、羽黒は投手陣の先発投手のチョイスとその立ち上がり。初回の攻防に注目したい準決勝第2試合だ。

羽黒・野口大成。

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