ヤマガタ野球通信

日大山形、鶴岡東の有利動かず。羽黒、九里学園は序盤をしのぎ勢いに乗りたい/秋季山形県大会・準決勝展望

9月23日に行われる東北大会出場をかけた高校野球・秋季山形県大会準決勝。第1試合は豊富な投手陣と主軸打者が仕事をして勝ち上がってきた羽黒と夏の甲子園出場校の日大山形が対戦。第2試合は2人の2年生が攻守に引っ張る九里学園と投打に圧倒的な力を見せつけて勝ち上がってきた鶴岡東が激突する。4校2試合の展望を無料公開する。

■第1試合 羽黒VS日大山形

エースらしいエースが存在せず、継投メインの投手陣を打撃がカバーする。タイプの似た両校だが、打線では日大山形に分があると見る。
清野隆之輔、那須渉太、遠藤海星、沼澤塁人、高橋直叶、浅野隼人ら夏の経験者のスイングは鋭い。特に4番の遠藤はここまで打率8割と大当たり。パワフルな富樫康介など新戦力も台頭するなど競争も激しい。なかでも3番を打つ杉山大地は万能型の打撃と俊足で打線をつなぐ役割を担っている。この日大山形打線を羽黒投手陣がどう止めるかが勝負のカギだろう。

羽黒の投手陣は現状、1年生右腕の曽我瑠仁が先発を務めている。1年生ながら先発を託されるだけあって、立ち上がりの不安定さがなく、制球もまとまっており大崩れしないタイプだ。曽我が中盤まで踏ん張り、後半は変化球主体の前野大雅、総合力で勝負する本間丈斗、ストレートに力がある遠藤康太ら2年生がリリーフを担うパターンで相手を抑えてきた。
しかし、日大山形打線相手となると、今まで通りとはいかないだろう。羽黒投手陣はそれぞれに特長はあるが、真っすぐはいずれも130キロ台前半が中心。組み立てと制球にスキが出れば日大山形打線ならしっかりと捉えそうである。ならば、いっそ最もストレートの威力がありそうな遠藤を主体に投手を起用するのも面白いかもしれない。変化球に課題があったり波が大きそうだったりとリスクもあるが、ハマれば日大山形打線をある程度、力で抑える可能性もある。

一方、日大山形の投手陣も、絶対的な力があるわけではない。ここまでは1年生の速球派右腕・本田聖、まとまりのある右腕・佐藤大清、左横手の変則派・渡部太心を中心とする継投で勝ち上がってきたが、3人とも現状では圧倒的な力を持っているわけではない。エースと期待される本田も山形城北戦では立ち上がりを攻められた。羽黒打線は迫力では日大山形打線に劣るが、太田駿平、相澤慶、宮下拓夢の上位は技術も足もあり、4番の山科恢心はチャンスに強く、6番の岩元舜は今大会打率7割と好調をキープしている。日大山形投手陣が相手でも、ある程度の得点は望めるだろう。

羽黒打線のトップを打つ太田駿平。先制点を奪う活躍を期待したい。

いずれにせよ、試合は点の取り合いになる可能性が高い。羽黒が勝つなら日大山形打線が勢いに乗る前に先制したいところ。先発投手と初回の攻撃が持つ意味は大きそうだ。これまで通り、安定感をかって曽我が先発か、それとも他の投手で一か八かの勝負に出るか。きらやか銀行の監督として実績を残した羽黒・大向誠監督のチョイスが楽しみである。

1年生ながら日大山形の背番号1をつける本田聖。

■第2試合 九里学園VS鶴岡東

見所は「鶴岡東・櫻井VS九里学園打線」だ。
鶴岡東の左腕エース・櫻井椿稀は最速138キロ、常時130キロ台中盤のストレートを制球良くコーナーに決め、スライダーや落差のあるカーブで緩急を使った攻めも上手い。安定感もあり試合経験も豊富で現状では県ナンバーワン投手と評価していいだろう。7回コールド勝利した準々決勝も7回零封とシード校・東海大山形を寄せつけなかった。
九里学園は打線活発で足を絡めた攻撃も仕掛けながら点を奪いにくる。ただ、本塁打が無いようにパワフルというイメージではない。それだけに櫻井が好調ならば力で封じ込めそうな印象も受けるのだが、気になっているのは「相性」だ。

鶴岡東の絶対的エース・櫻井椿稀。

九里学園打線の特長を一言で表すならば「引っかけない打線」である。主軸の大堀竜慈、今野正就を筆頭に多くの打者が逆方向へしっかりと打ち返すバッティングで相手投手を攻略してきた。それが櫻井にも通じれば、右打者はクロスファヤーを右へ、左打者は逃げていく外のボールを左へ、コツコツと打ち崩していくイメージもできる。左の櫻井に対して長打も期待できる1番・中山貴斗に大堀、今野とキーマンになりそうな打者が右というのも不気味だ。そこに俊足の渡邉謙心などの足も絡めれば……。ただ、これまで対戦してきた投手と櫻井ではレベルが一段違う。九里学園打線が櫻井にも通用するかは興味深いポイントである。それは九里学園が東北大会に進出しても打てるか、という点の試金石にもなるだろう。

九里学園の不安点は投手陣である。背番号1をつけた1年生右腕・加藤成之助の投球回数が2イニングであるように、実質的には打線同様2年生の今野正就と大堀竜慈の両右腕が軸である。2人とも投手としては小柄で、125キロ〜130キロのストレートと変化球で丁寧にコーナーを突く似たタイプ。今野は比較的、変化球が多く、大堀はストレートが中心でスピードもやや速いという点が違いだ。

九里学園・今野正就は投げて、打って、守って、チームをまとめる大黒柱。

2人も悪い投手ではないが、鶴岡東打線が相手となると完璧に抑えるのはなかなか難しいだろう。鶴岡東打線は例年通り、全力疾走を欠かさずスキをあまり見せない。各打者がしっかりとボールをミートして強い打球を放つ。4番には一発もあるロングヒッター・日下心が座るなど旧チームには欠け気味だった「打線の軸」も確立させようという意図もうかがえる。俊足の選手も多く、ここぞという時の畳みかける攻撃は脅威だ。それだけに今野、大堀としては、多少の失点は折り込み済みとして、ビッグイニングを作らせないことを意識したい。特に大堀は投手を本格的に始めてまだ2ヶ月。かき回されるのが怖い。バックの守備は比較的、安定しているので、これまで同様、粘り強く打たせて取ることができれば光明は見えてくる。

試合は櫻井が圧倒的な力を発揮すれば点差がひらいて鶴岡東が勝利する可能性もある。九里学園が勝つならば、今野、大堀がなんとか最少失点でしのぎ、接戦に持ち込みたいところ。そう考えれば、先発は大崩れの可能性がより低い主将・今野が有力だろうか。敗れた場合、翌日に東北大会出場権をかけた3位決定戦があるだけに投手起用が悩ましい準決勝。両校指揮官の采配にも注目だ。

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