ヤマガタ野球通信

羽黒VS山形学院、交錯した両監督の「マウンドを託す」思い<高校野球・秋季県大会レポート>

9月8日に開幕した高校野球・秋季山形県大会。9月10日は2回戦8試合が行われた。
ヤマリョースタジアム山形の第1試合は、きらやか銀行を率いて都市対抗野球出場の経験もある大向誠監督が新チームから指揮を執る羽黒と、ベテラン・滝公男監督指導する、夏の経験者も多く揃えた山形学院が激突。2回戦屈指の好カードという見立て通り、試合は延長タイブレークにもつれ込む接戦となった。

■めまぐるしく流れが行き来した後半

先制したのは羽黒。1回表に1番・太田駿平、2番・相澤慶が相手のエラーで出塁して無死一、二塁のチャンスをつかむ。山形学院の先発は昨秋もエースナンバーを背負った右腕・三村寿行。春よりもやや球速も威力も増したストレートを軸に攻め、太田も相澤も内野ゴロに打ち取ったが味方の守備にミスが出たのは不運だった。羽黒は3番・宮下拓夢の中犠飛で太田が進塁。1死一、三塁で4番・山科恢心がライトの頭を越える三塁打を放って羽黒が2点を奪った。羽黒は3回にも宮下のタイムリーで1点を追加する。

先制タイムリー三塁打を放った羽黒の4番・山科。

山形学院も4回には6番・伊藤咲人、5回には3番・松岡晟太郎のタイムリーで小刻みに加点。羽黒も6回に1点を追加してゲームは4対2、羽黒のリードで8回裏、山形学院の攻撃を迎える。山形学院は羽黒の3番手、右腕・本間丈斗に下位打線が3安打を浴びせて2点を奪い、ついに同点に追いつく。しかし、羽黒も9回表に1死二塁から9番・秋葉快斗のタイムリーですぐさま勝ち越し。試合は9回裏、山形学院の攻撃を迎える。

旧チームから主軸を務め、この日も3安打を放った山形学院・松岡。

羽黒のマウンドに立つのは8回裏にリリーフして山形学院の攻撃を断った右腕・遠藤康太。遠藤は長身から投じる130キロ半ばの威力ある速球が武器だが、この日はあきらかに変化球が抜けていた。打者はほぼ真っすぐ1本に絞ってもOK、と言っても過言ではない状態である。実際、山形学院は先頭の3番・松岡が中前打で出塁すると、1死後に5番・鈴木峻太がレフト線に二塁打を放ち土壇場で同点に追いつき、さらに1死二塁と一気にサヨナラのチャンスをつかむ。しかし、ここで遠藤が踏ん張り、コーナーに真っすぐを決めて8番・山田佑一朗を左飛に打ち取り、9番・三村からは三振を奪ってピンチを切り抜けた。

■両監督、それぞれの「マウンドを託す」決断

そして延長タイブレーク10回表、羽黒は2死一、三塁から4番・山科がこの日、3打点目となるレフト前タイムリーで1点を勝ち越す。再び追い込まれた山形学院だったが、10回裏、無死一、二塁から1番・海藤珀のバントが内野安打にとなり無死満塁と逆転サヨナラの絶好の場面を迎える。羽黒のマウンドには引き続き遠藤。変化球が使えないに等しく、ストライクになるのはほぼ真っすぐのみとなっていただけに、投手交代もあり得ると感じた。果たして羽黒ベンチ、大向監督の決断は——。

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