『R100』 -どんな映画を作ろうと「誰にも理解できない」なんて言っちゃいけないんだよ、松本くん! (柳下毅一郎) -3,169文字-
監督・脚本 松本人志
出演 大森南朋、大地真央、渡辺直美、松尾スズキ、松本人志、渡辺篤郎
今ふりかえって見れば、『大日本人』はそんなに酷くもなかったな、と思うのである。いや、あれは本当に酷い映画で、あんなものを世に送り出してしたり顔をしている松本の独善と愚かしさにはほとほとうんざりしたのだが、それでも、あそこにはまだ何かがあった。つまり映画の源泉なるものにどこか触れている部分があった。それはまちがいなく松本にとって意図せざるところであって、それを狙っていたわけでもないしどうすれば再現できるのかもわかっていない。おそらくは自分の映画の美点がどこにあったのかもわかっていなかったに違いない。その後作れば作るほどにどんどん悲惨なことになっていく松本映画、律儀につきあってあげる人も一人減り二人減り、ぼくが見に行ったときには10人足らずの客だった。平日深夜の上映だったとはいえこのキャスト集めて公開週の新宿である。これ、本格的にヤバイんじゃないの? 吉本ちゃんと番宣とかやってんの? とオレが心配になるていたらく。さて。
トイレでくわえ煙草で化粧を直しているトレンチコート姿の美人。喫茶店の席に戻ると、そこには中年男が座っている。「わかりました? わからなければ答えをお教えしますがベートーベンの第九番の第四楽章は「歓びのうた」で……」云々とどうでもいい蘊蓄を語る中年男。うぜえ!というところでいきなり女がビンタをかまして男は吹っ飛ぶ。表に出ると女は無言で男を階段から突き落とし、トレンチコートを脱ぐと下はボンデージ。
ぽわわわ~んと温かいものに包まれる男。
(残り 2490文字/全文: 3165文字)
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tags: 佐藤江梨子 吉本興業 大地真央 大森南朋 松尾スズキ 松本人志 渡辺直美 渡辺篤郎 片桐はいり
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