『ジョーカー・ゲーム』 あのさあ、オレもう「さあゲームのはじまりです」禁止って言ったよね? 何度も何度も言ったよね?(柳下毅一郎) -3,415文字-
『ジョーカー・ゲーム』
監督 入江悠
原作 柳広司
脚本 渡辺雄介
撮影 柳島克己
音楽 岩崎太整
出演 亀梨和也、深田恭子、伊勢谷友介、光石研、嶋田久作
あのさあ、オレ、もう「さあゲームのはじまりです」って禁止って言ったよね? 何度も何度も言ったよね? しかるにこれもうタイトルからして「ゲーム」。ゲーム感覚で騙しあうスパイものって新しいよね! と誰かが思ったのかどうか知らないが、原作はベストセラーらしいですよ。陸軍によるスパイ組織“D機関”は「死は最大の下策」と「死なず、殺さず」をモットーに人死にの出ないスパイ活動にいそしんでいるのであった……ってままごとかよ! お遊戯かよ! いや比べてはいけないとわかってる。わかってるけど、たとえば『誰よりも狙われた男』もこれも同じスパイ映画なんだよね。いやまったく心にどんな言い訳をすればこんなものが作れるのかと……
1941年。軍隊で訓練中、理不尽に暴力をふるう上官に反抗した亀梨和也は逆に上官を殺してしまう。当然軍法会議で死刑判決がくだり、銃を向けられて……だが弾は出ない。は?というところにあらわれたのは“D機関”の創設者結城中佐(伊勢谷友介)であった。「おまえはもう死人だ。家族も係累もない……スパイになれ!」
いやスパイとか言うわけ? 1941年に? 敵性言語? まあそんなわけで亀梨くんは結城に連れられて商社を装う“D機関”本部に向かう。そこでは「軍隊上がりなんか使えねーよ」「軍隊上がりなぞ必要ありません」とあからさまに陸軍おちこぼれの亀梨くんを嘲笑するエリートたちが待っている。いやこのエリートがなんなのかよくわからないわけで、たぶん陸軍中野学校出のスパイ・エリートなんだろうと思うけど、そこのところの説明が何もないのでなんでこいつらがこんなに威張ってるのか、なぜ陸軍の落ちこぼれが駄目なのかさっぱりわからない。それを言うなら「上官に反抗して殴り殺すような奴は感情的で衝動的すぎて命令違反をするんで使えない」と言うほうが全然説得力あると思うのだが、なぜか誰もそういうことは言わないのだ。そんなわけでまったく無意味に上から目線のエリートたち。「ゲームをするか? プライドをかけた勝負だ」とポーカー勝負を挑む。負け続ける亀梨。実は全員が通しをやって、亀梨のカードは筒抜けになっていたのだった。
「これは仲間を作るゲームなんだよ。仲間のいないおまえはさしずめジョーカー、今の日本と同じさ」
たぶんこのセリフを言いたかっただけだと思うんだけど、そのためにこの無意味なゲーム。これ勝っても負けてもなんの意味もないんだよね。なんというままごと。で、そうやって勝ち誇っていたエリートだが、亀梨に挑発されてすぐかっとなり、銃をつきつけて
「感情をおさえきれない奴にスパイの資格はない」
と結城にクビを言い渡される。いやそれなら最初に亀梨くんを……
(残り 2226文字/全文: 3419文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
タグマ!アカウントでログイン
tags: さあゲームの始まりです 亀梨和也 伊勢谷友介 光石研 入江悠 岩崎太整 嶋田久作 柳島克己 柳広司 深田恭子 渡辺雄介
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ