『レインツリーの国』 まだまだ続く有川浩ワールド ・・・なにやらまったく理解できない気持ち悪い共同体ができあがっているとしか思えない。(柳下毅一郎)
『レインツリーの国』
監督 三宅喜重
原作 有川浩
脚本 渡辺千穂
撮影 柳田裕男
音楽 菅野祐悟
主題歌 Kis-My-Ft2
出演 玉森裕太、西内まりや、森カンナ、片岡愛之助、麻生祐未、大杉漣、高畑淳子
また有川浩原作映像作品である。一説には「映像化の女王」と呼ばれているらしい有川浩、誰が求めているのか知らないが、テレビに映画にひっぱりだこ。誰も望んでいなかったのではないかという(少なくとも映画としては年間ワーストレベルにひどかった)『図書館戦争 THE LAST MISSION』に引きつづいての新作、これ本当にびっくりしたんだけど、原作は『図書館戦争』シリーズに登場する小説(劇中で登場人物が読んでいる小説)なのだという。もちろんそんなものは実在しないわけだけど、「そんなすてきな小説なら本当に読んでみたい!」という読者の要望に応えるかたちで実際に小説を書いたのだという。そしてそれが映画化までされてしまったという。なんなんだ、これ……?
なにやらまったく理解できない気持ち悪い共同体ができあがっているとしか思えないのだが、そんなわけで登場した本作、話はですね、もちろん読書好きのための文系ラブストーリーですよ!
主人公、伸行(玉森裕太)は関西出身で東京で一人暮らし。引っ越しで本を整理していたのだが、中坊時代に愛読していたライトノベルも持ってくる(この程度で「読書好き」呼ばわりしてもらえる優しい世界……)。ところで上下巻はあるものの、完結巻がどこかに行ってみあたらない。どんな結末だったっけ……とタイトルでググると(てか好きな小説だったんじゃないのかよ!)、「レインツリーの木」という読書ブログがヒットする。その語るところによると、高校生のハチャメチャな青春アクションとしてはじまりながら途中で急展開を遂げ、最後は悲劇となって「愛さえあれば、なんて嘘だよ」と世界の無情を訴えて終わる話なのだという。「そうそう、そんな話やった」と思いだす伸行。思いあまって「レインツリーの木」管理人にメールを書く。
「はじめまして! めっちゃ懐かしくてメールしました。そうそう、そんな話やった!」
なんでため口やねん! ていうかね、こういう話だったらてっきりその小説(ちなみに『フェアリーゲーム』というタイトルらしい)が知る人ぞ知るカルト小説で、絶版になって入手困難……みたいなものなのかと思うじゃないか。違うんだよ、これ今でも普通に本屋で売ってるロングセラーなのだ。おまえそんなに好きな小説なら買いなおせよ! 安易に読書ブログで結末を知ろうとするなよ! てかたとえ絶版だったとしても、そのくらいの本ならマーケットプレイスでもなんでも買えるだろ! こんな奴が「読書好き」と言われる……
そんな感じでメールすると、なんと読書サイトの管理人である「ひとみ」から返事が来る。文系オタクの夢の展開だ! メールで本の感想を送りあううちにスケベ心をおこして「直接会って、本の話をしたい」と言いだす伸行。しかしここまでその大昔のラノベ以外の本読んでる描写ないんだけどなあ。「会いたい」と言われていきなりメールが止まってしまう「ひとみ」だが(写真詐欺か?と思ったが、どうやら写真交換すらしていないのだった。純粋だからね)、意を決して会うことに同意する。待ち合わせは某書店で『フェアリーゲーム』の棚の前。やってきたのは人見利香(西内まりや)であった。伸ばしただけのロングヘアと体型のわからないワンピという実にもっさいかっこうであらわれた「ひとみ」(伸行は名字を名前だと思いこんでいた)、ここだけはいかにも文系女子ぽくてよかったので、てっきり地味っぽい女の子としてキャスティングされたのかと思った。実際にはそんな意図はなかったようですが。
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