柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『大阪男塾・炸』 キャバクラ映画があるならホストクラブが映画を作ってもいいじゃないか! というわけで大阪ミナミのホストクラブが製作。主役は現役ホスト!

 

 

『大阪男塾・炸』

監督・脚本 花堂純次
撮影 瀬川龍
音楽 廃棄猫~すてねこ~Gt
主題歌 スター☆HIDE様
出演 スター☆HIDE様、塾長・拓真、野原なつみ、城美うらら、中尾みほ、南智章、菅原哲

 

キャバクラ映画があるならホストクラブが映画を作ってもいいじゃないか! というわけで大阪ミナミのホストクラブ大阪男塾が製作の映画である。主役は現役ホスト!ということで、もともと俳優志望だったりする現役ホストが主演で「女から奪うのではなく、与えるホスト」という大阪男塾のホスト道を嘘くさく描きあげる……ものかと思ったのだが、これがあにはからんや斜め上の方向に転がっていく映画で……なお、気になる現役ホストたちの演技っぷりだが、主演の二人は撮影前に二ヶ月の特訓があったとかで、頑張っているんですが滑舌がね……

 

 

 

ホストクラブ「大阪男塾」の主任リュウジ(塾長・拓真)は出勤前に厄介客クロミ(中尾みほ)を同伴中。そこでケータイを睨みながらブツブツ言ってる男ノブナガ(スター☆HIDE様)とすれ違う。ノブナガ、もちろんオレオレ詐欺の掛け子で、世にも棒読みな詐欺の口上を述べると、見事にひっかかったおばあちゃんが法善寺横丁に百万円を持ってやってくる。ノブナガ、とりあえずおばあちゃんからお金をもらうものの、丸見えの詐欺に気づいた孫からの通報で警官に追われ、さらに詐欺の元締め金村(南智章)が見守る中を百万円を持って逃げることになる。水かけ地蔵から黒門市場へとミナミの観光名所を逃げるノブナガ、必死で隠れてやりすごす。

一方、そのころ開店前の「大阪男塾」でも大事件が発生していた。月に一度の給料日で、全員の給料として払う現金2000万円が事務所にあったのである。そこを「悪」と書いた見るからに悪い仮面の悪党三人組に襲われ、現金を奪われてしまったのである。意気揚々とアジトに戻ってきた三人組を、たまたま物陰に隠れて警察をやりすごしたノブナガは見ていたのだが、それはまだ後の話。

急を受けてクロミをおいて「男塾」に出勤のリュウジ。騒然とするホストたちを、取られた金は自分が埋め合わせて給料はちゃんと払うからとなだめる。だが2000万円もの大金、どうしたら……? とりあえず知り合いに頭を下げまくるしかない!というわけで母(美村多栄)をはじめいろんな人に会いに行き、そこらへんで昔話して過去を語っていくといういつもの奴。だがそれだけでは当然うまくいかないので、やはり高利貸し「鰐トラ」グループに頭をさげに行くことになる。もともと「男塾」に目をつけ、その利権をわがものにしようと狙っていた「鰐トラ」社長(菅原哲)、リュウジに土下座させてさらに頭を踏みつけにするみたいな悪党ムーブを見せ、1000万の貸付けに加えて東京のスーパーホストれん(鈴木勤)を送りこんで店を混乱させようとする。実は「鰐トラ」の壁には「悪」の仮面が貼ってあったりして、強盗の黒幕が「鰐トラ」だというのは見え見えなのだった。にもかかわらずオーナーのために警察には行けない、というリュウジ。

「……ヤクだ」
「え、あんなに苦労して抜いたのに!」
「最近様子がおかしかったやろ。ぼーっとして呂律まわらんかったり、急に店休んだり……」

 

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