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MVP篠山の成熟と「顔、堅いよ!」と言ってくれる“仲間”の存在<コラム>

 

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西地区2位の強豪・名古屋ダイヤモンドドルフィンズに、4Q残り7分49秒の時点で最大で11点差をつけられた。かなり厳しい状況だった。

それでも、川崎ブレイブサンダースはそこから逆転した。キーマンとなったのが篠山竜青だ。この試合のMVPに選ばれるのにふさわしいような活躍で、4Qだけで8点、1アシストを記録した。

とりわけ、2本連続で決めた3Pは大きかった。

「逆転できるぞ」

チームメイトだけではなく、とどろきアリーナを埋め尽くしたファンにまで信じさせたプレーだった。

ただヒーローとなった篠山は、それまでの時間帯に苦しんでいた。この試合での3P成功数の推移は以下の通りだ。

3Qまで:4本放って、成功なし
4Q:2本放ち、2本とも成功

そんな状況で、勝負を決める4Qで責任を持ってシュートを放ち、決めたことに価値はある。

 

では、大事な場面でシュートを打ち、決めるができたのは何故なのか。

 

そこには大きくわけて2つの理由があるのだが、どちらも、深く胸に響くよう内容だった。

まず、1つ目について。篠山はこんなコメントを残している。

「シュートタッチは良かったので、『いつもなら入っている感覚なのになぁ』と思って打っていました。若い時だったらもしかすると『今日はシュートが入っていないから、自分は打たないほうがいいのかな』というマインドになってしまったかもしれないです。

だけど、『良いシュートを打って、それが外れて負けるんだったら仕方がない。セレクションの中で打たなきゃいけない場面では、強気で打たないといけない』と(自然と思えた)。そこはできていたかなと思います。ある意味で若い時よりも、切り替えが上手になってきているとは感じますね」

1つ目の要因は、篠山の成熟だ。

一般的に20歳を超えた人間の体力や運動量は年齢を重ねることで落ちていく。この常識に照らし合わせれば、運動能力を求められるバスケの世界では30歳を超えた選手に活躍の余地はないように見える。

しかし、この日の篠山のように、優れたベテラン選手は35歳になっても活躍して見せる。それを可能にするのが、選手としての成熟だ。成功体験だけではなく、失敗をした苦い思い出を含め、色々な経験を積むことで、選手として成熟していく。そして、それが良いプレーを披露する原動力となる。この日の篠山は、歳を重ねるのは決して悪いことではなく、経験を積んだからこそできる判断があるのだという真実を証明したのだった。

ただ、要因はもう1つあった。

そして、これこそが今シーズンの川崎の伸びしろを感じさせるものだった——。

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