松沢呉一のビバノン・ライフ

近親交配による異常発生の確率-ペットショップの証言 1(松沢呉一) -2,897文字-

※中に出てくるペットショップのインタビューは去年のものです。ペットにおける近親交配の実情を聞いてきたのですけど、あんまり「ビバノン」向きじゃないかと思ってボツにしました。でも、ちょっと前に、本文の冒頭に出した報道を見て、「知らない人もいることなので出しておくか」と思い立った次第。時制は現在に修正済みです。病気のペット写真は撮ってないので、動物の写真を適当にあしらってみました。

 

 

ペットの遺伝性疾患

 

vivanon_sentence知っている人は知っているとして、ペットを飼っている人たちの中には無頓着な人たちもいそうです。

 

 

「売れる犬」ゆがんだ繁殖 遺伝性の病気、日本で突出

 犬や猫にも、遺伝子が原因の病気がある。実は日本は、世界でも目立って遺伝性疾患の犬が多いという。検査技術の向上で病気の発生を減らせるようになったのに、特定の犬種に人気が集中する風潮と繁殖業者(ブリーダー)の意識の低さが、望ましくない状況を生みだしている。

業者の意識向上がカギ

名古屋市内で5月20日、「ペットプラス」を全国展開するペットショップ大手AHBの主催で、遺伝性疾患などに関するシンポジウムが開かれた。同社診療部の市橋和幸・獣医師がブリーダーらを前に、失明につながる病気「進行性網膜萎縮症(PRA)」を例に取って「発症犬は繁殖に用いるべきではない」などと説明した。

原因遺伝子が一つに特定された犬の病気は5月現在、193ある。原因遺伝子を持っていても見かけは健康で発症しない「保因犬」同士の繁殖を行うと、4分の1の確率で病気を発症する犬が産まれる。一方で、犬の全遺伝子の配列はすでに解読されており、保因犬を見つけるための遺伝子検査も約50の病気で可能になった。

ブリーダーが注意をすれば原因遺伝子を受け継ぐ犬を減らせる環境は整ったはずだが、AHBの研究所長も務める筒井敏彦・日本獣医生命科学大名誉教授は「大学付属病院で犬の遺伝性疾患を長く見てきた。『日本は世界でも突出して犬の遺伝子疾患が多い』と言われる」と話す。

(略)

ペット産業側も動き出してはいる。AHBは年間のべ約1千人の契約ブリーダーらに遺伝性疾患の情報提供を行っている。ペッツファーストは「販売した子犬が発症した場合、ブリーダーに連絡して繁殖ラインから外させるなどの対応をしている。購入者には、診療費の一部負担や提携病院を紹介している」(正宗伸麻社長)。同じくペットショップ大手のコジマも、入荷後の全頭検査で異常や発症がわかった場合、ブリーダーに繁殖の自粛を促すなどしている。

「朝日新聞デジタル」2015年5月30日

 

 

DSCN1746病気を発症している場合はわかりやすいとして、発症していなくても、潜在的に病気の遺伝子をもっている個体が、狭い範囲で近親交配を繰り返している日本のペットには相当数いるってことであり、発症した個体は繁殖させないなんて小手先のことをやってもキリがないでしょう。

ペットショップやブリーダーはこの辺のことを知っていても、表立っては語りにくいわけですけど、ペットショップが率先して、このことを広く知らしめなければならないくらいに事態は深刻だと言えます。

この辺の配慮なく、「うちのワンちゃんと、誰それさんちのワンちゃんを掛けあわわせよう」なんて考えると、遺伝性疾患をもった子どもが生まれてくる可能性があります。その覚悟がある人たちはいいとして、その場合は遺伝子検査をしてからにした方がいい。

なんにせよ、今の時代、ペットを飼うなら、知識は必須かと思います。

※写真は銭湯の前にいたネコ。たぶんこの前にある雑貨屋の飼い猫だと思います。

 

 

ペットショップに聞く近親交配の実態

 

vivanon_sentenceこの間、銭湯の中庭にある池を見ていたら、背骨が曲がったプラチナのコイがいました。サカナにどの程度の遺伝的な病気があるのかわからず、この場合も、遺伝的なものかどIMG_3516うかわからないですが、コイも近親交配を重ねていますから、その可能性はあるのかもしれない。

どの程度、近親交配を繰り返せば、どの程度、奇形や病気が発現するのか。人間の実験は難しいですが、動物ではすでにさまざまなデータがあります。つうか、遺伝子を調べれば確率はわかるわけですけど。

差し障りがあるかもしれないので、どこの店なのかは伏せておきますが、あるペットショップの話です。

—イヌでもネコでもトリでもブリーダーが近親交配を繰り返すために、奇形が生まれたり、病弱だったりすることがあるって言いますよね。

「例外もありますけど、どの種類でもペットとして飼っている動物にはそういう傾向があると言っていいと思います」

よくイヌやネコでは、「純血種だから劣性遺伝の病気が出やすくて弱い」と言われていますが、半分正しくて半分間違いです。

 

 

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