昭和三十年代のギャルが今も働いている?—渋谷にパンマを見た 2-[ビバノン循環湯 211] (松沢呉一) -3,082文字-
「おっパブ嬢から意外な情報—渋谷にパンマを見た 1」の続きです。
本番がイヤじゃなければ悪くない仕事
ホテル街でお好み焼きを食いながら、パンマの話は核心に入った。
「本番の料金は決まっている?」
「だいたい。個人の問題だから、いくらふっかけてもいいんだろうけど、常連さんが多いから、あんまり高いことを言うと、次から呼んでくれない。そこは相手を見てというところもあるけど、相場は本番で二万円でしたね」
「マッサージ料とは別か」
「いや、込み」
「ホテル代がかかるけど、一時間二万円は安いな。ヘルスとあんまし変わらないじゃないか」
「だけど、本番料金一万二千円は全額私たちのものじゃないですか。マッサージ料のうちの四千円も戻ってくるから、手取りは一万六千円ですよ」
「そっか。だったら悪くないか。総額二万五千円くらいのソープと一緒」
「そうなんですよ。全員と本番するとして、三本しかつかなかったとしても四万八千円になる。そこからビール券代が出ていって、あとは店に対する電気代が月に一万五千円」
「なんの電気だよ」
「控え室の」
「電気代なんて多くて月に二万か三万くらいだろ。十人で割れば二千円か三千円だぞ」
「そうなんだけど、一人一万五千円ということになっている。月に一日しか出なくても一万五千円。毎日出ている人でも一万五千円」
売春料金に手を出さない代わりに、こういうところで取り戻しているのである。
「でも、お茶代とかもかかるから、まあ、そのくらいはいいんじゃないですか。実際、一日四万から五万は確実に持って帰れるから、月二十日出勤で百にちょっと欠けるくらいにはなっていた。今考えると、条件はよかったんですよね。ヘルスだったら、六十分コースで手取り八千円くらいだから、二本分を一本で稼げる。そんなに多くはないけど、余分にくれる人もいるし。全体的に女のコの年齢層が高いから、若い新人だと、お客さんも奮発してくれるんですよ」
「一日最低三本くらい?」
「出勤している女のコの数にもよるけど、私の場合で三本から四本はついていましたね。普段は七、八人出勤していて、多い日は十二、三人いたかな。その人数に左右されるんだけど、女のコの出勤が少ない日は六本ついたり。天候の関係でお客さんが来なくて、女のコの出勤も多いと、指名のないコの中にはゼロというのもあったけど、私は一回しかボウズを体験してない。そういう日でも、ビール券を渡しているから、四千円でもすごく悔しい。保証もないし」
しかし、六本つけばざっと十万円である。
「何時間くらいで?」
「日によって違うけど、私は十時間くらい出ていた。出勤時間もわりと融通がきくのがよかった。昼の一時から深夜まで営業していて、オープンラストで働いている人、八時くらいまでの早番の人、それ以降の遅番もいる。意外に昼間の客が多いんですよ。定年退職したおじいちゃんたちはたいてい昼間になるから。でも、そういう人たちは決まったおねえさんたちを指名する。指名料ないから、馴染みの相手の方が安心じゃないですか。だから、人気のある人たちは私よりもずっと稼いでいた」
生かゴムかは本人次第
一見さんはほとんどおらず、客の質も悪くなさそう。その上、バックがいい。この商売、悪くないな。
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