松沢呉一のビバノン・ライフ

シャブ中は風俗嬢に向かない—クスリのリスク–[ビバノン循環湯 242] (松沢呉一) -4,710文字-

上から読んでもクスリのリスク、下から読んでもクスリのリスク。兼松左知子のように、そういうところだけを取り上げたがる人たちがいるので、このことは触れにくいのですが、実際、クスリに手を出す風俗嬢はいます。クスリに手を出すマスコミ関係者がいるのと一緒。クスリに手を出すミュージシャンがいるのと一緒。そういった風俗嬢についてまとめたもので、十年以上前にどっかに出した原稿です。調べ直すのが面倒。いつものように写真は適当。本文には関係ありません。

 

 

 

クスリのリスク

 

vivanon_sentence最近精神状態が落ち気味である。「人間、弱くなると恋をする」という我が仮説があって、弱い自分を支えるために、誰かに依存したくなるんである。

また、私の場合、弱くなると、クンニをしたくなる。普段もしたいんだが、普段以上にしたくなる。「松沢さんはクンニがうまいよね」と言われて自信を取り返そうとするんである。自分が必要とされているかもしれないことを実感できるのはクンニしているときだけなのだ。寂しい。

私に限らず、人はいろんなものに依存している。ギャンブルに依存している人、仕事に依存している人、家庭に依存している人、セックスに依存している人、酒に依存している人、金に依存している人などなど。たいがいの人はそういうものだ。その程度が強まると依存症という状態になる。「こんなことをしていてはいけない」と思いながらもやめられない状態だ。

そんな時、ヘルス嬢のHちゃんから電話があって、店を移ったというので、クンニに駆けつけた。クンニしたあと、私は彼女にこう聞いた。

「もう辞めた店のことだから聞くけど、Aちゃんはクスリやってなかったか?」

Aちゃんは Hちゃんが最近までいた店のナンバーワンだ。

「えっ、どうしてわかったの? 私も確証はないけど、やっていると思う」

ナンバーワンと言っても、出勤が多いために指名が必然的に多くなっているだけなんだが、雑誌にもガンガン出ていて、まあまあの美形なので、雑誌指名も多いだろう。

このコには一回しか会ったことがないんだが、目が据わっているのだ。その上落ち着きがないんである。落ち着きがないことでは私も負けないけれど、オドオドとした落ち着きのなさだ。

たった一回会った時の印象だが、「このコ、ヤバいな。このコを使っているこの店もヤバいんじゃないかな」と思った。ちょっと話をしただけでも様子がおかしいのがわかったから、客の多くも気づくはず。

 

 

ベッドの下からアルミホイル

 

vivanon_sentenceHちゃんも当然気づいていた。

「昔クスリをやっていたという話は店の人から聞いていて、今も時々様子がヘンなんだよね。たぶん松沢さんはそういう時に会ったんだと思う。私はやらないからよくわからないけど、クスリだと思う。最初は後遺症みたいなものだと思っていたんだけど、ベッドの下にアルミホイルを巻いたのが捨てられているのを見つけたことがあるんだよ」

「それは間違いない」

「アルミホイルって何するもの?」

「じゃがいもとベーコンを包んでレンジで焼くもの」

「ニンニクのオイル焼きもおいしいよね、じゃなくて」

「マリファナだったらパイプにする。でも、ニオイがするから、店ではやらないでしょ。覚醒剤かコカインを鼻から吸ってるんじゃないのかな」

「それってヤバいんだよね」

「注射に比べれば吸っている方がまだマシだけど、そんなもんをベッドの下に捨てていること自体、イカれているよな」

 

 

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