松沢呉一のビバノン・ライフ

初めてのやる気—一瞬の心の通い合い 2-[ビバノン循環湯 337] (松沢呉一) -2,532文字-

根性立て直し計画—一瞬の心の通い合い 1」の続きです。

 

 

 

誰にも言っちゃダメだよ

 

vivanon_sentence長いキスのあと、彼女は「チョー気持ちよかったよ」と少し照れくさそうに言った。

「ついさっきまで、こういうところでは感じないって言っていたのにな」

「自分でも予想外だよ。こんなこと人に言えないよ。私、声出てた?」

「少しはね」

「ヤッバい」

「でも、そんなに大きい声じゃなかったし、他のコでもっと大きい声のコもいるから大丈夫だよ」

「他の部屋から聞こえてくるけど、あれって演技だと思ってたよ。本気になることもあるんだね」

「人によるけどね。演技のコもいるし」

ここでまた声を潜める。

「誰にも言っちゃダメだよ」

「言わないよ」

「ねえねえ、私もしてあげたくなったよ」

「でも、疲れたろ。まだラストじゃないよな」

「うん、違うけど、帰りたいよ、もう」

「休んでもいいよ」

「出さなくていいの?」とチンコをいじくる。

「いいよ。今度してよ」

「また来てくれるの?」

「いいよ。つうか、また会いたいよ」

「私も、またして欲しい」

「でも、店長が出勤が決まってないって言っていたよ」

「うん」

「ちゃんと出勤する曜日を決めなよ。そうすると、君が出勤する日を忘れなくなるから、会いに来やすいいだろ」

「そうか、わかった。いつがいい? そっちに合わせるよ」

初めて会った客の都合でスケジュールを決める風俗嬢は珍しい。完全にこっちのペースだ。

 

 

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