松沢呉一のビバノン・ライフ

クオータ制を導入したら確実に起きること—SPEEDを国会で再結成させるつもりか-(松沢呉一) -3,295文字-

日本の女性議員率」シリーズの続編みたいなもんです。 

 

 

なんでそうも安易な結論で満足できるのやら

 

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今回の選挙でも、ただ結果を見て、「日本ではこんなに女性議員は少ない。クオータ制を導入すべし」という安直極まりない意見が出ていて、頭が痛いです。こういうことを言いたがる人たちこそが、女性議員率を低くしていることに気づきましょう。

どこで読んだか忘れましたが、小池百合子は「女性議員率の低さは立候補者の少なさだ」とはっきり語ってました。こんなん当たり前なんですけど、この当たり前のことさえ理解せずに、結果だけ見て、「日本は女性が政治家になろうとしても壁があるのだ」なんて言い出すのが多すぎです。

しかし、その小池百合子も「鉄の天井を知った」と言っていて、「なんだよ、お前もか」と呆れましたぜ。これは「女性だから」という意味ではないと弁明していましたが、「自分が悪いのではない」ってことには違いがない。どう考えても自分が悪い。

「クォータ制を」と言いたがる人たちも小池百合子と同じで、これは自分の問題なのだと気づいていない、あるいは気づいていながら人のせいにしています。

以下は「日本の女性議員率」の繰り返しになりますが、今回の衆議院選挙を踏まえて、改めてクオータ制に反対する理由を説明しておきます。

 

 

女性議員が少ないのは立候補するのが少ないから

 

vivanon_sentence以下のグラフを見てください。

 

毎日新聞」より

 

候補者数は少しずつ増えていて、とくに90年代から急増。戦後、婦人参政権が認められて間もない時期は特例であり、凸凹はあれ、あとはずっと候補者数と当選者数は比例しながら推移し、90年代から確実にその数を増やしています。

やはり凸凹はあれ、この数字は長期で見た時には増えていくことが期待されます。このことは日本の女性議員率」シリーズで念入りに説明したように、たとえば大学における政治・経済・法律を専攻する女子学生の増加にシンクロしています。すでに男女比が同程度になっている法学部がいくつもあることからして、立候補するに足る人材は今後も増えていくことが予想できます。あとはそれをどう着実なものにし、早めていくかです。

 

 

都民ファーストの夢はいずこ

 

vivanon_sentenceただし、今回の衆院選は異例で、209人の女性候補者が出て、候補者に占める割合は17.7パーセント。衆院選においては過去最高の女性率です。しかし、当選したのは465人中47人で、割合は10.1パーセント。

これだけを見ると、「女が立候補しても当選しにくい。投票用紙が男に操作されている」と言い出すのがいそうですが、この理由は簡単です。

現職は実績、知名度の点で有利ですから、変化が起きにくく、新人を見る必要があります。

その新人で多くの候補者を立てたにもかかわらず、惨敗したのが希望の党です。女性新人候補者は35人(元を含む)で、当選したのはたったの1人。長崎2区の西岡秀子のみなのです(この数字はリストを見てカウントしたもので、数字が間違っているかもしれないですが、間違っているとしてもプラマイ1人か2人でしょう)。

西岡秀子は民進党からの合流組。西岡武夫の娘であり、父親の秘書をやっていました。国政に挑戦するのはこれが二度目であり、新人と言ってもポッと出とはちょっと違って、父親の支持基盤を受け継いでいるでしょうし、選挙のノウハウもある程度はわかっているでしょう。政治家は公私混同をやってはいけないってことくらいも知っているでしょう。つまり、一定の条件を満たしている候補でしたから、希望の党で唯一の女性新人当選者であることも納得しやすい。

とくに東京では、全25選挙区のうち23区で希望の党は候補を擁立し、うち9名が女性。4割近い高率です。そして、女性候補は全滅です。お見事。

民進党からの合流組がいますから、希望の党全体の女性率はそう高くはないですが、新人については「都議会選の夢よふたたび」とばかりに多数の候補を擁立し、それが惨敗したため、全体の女性候補の当選率を下げてしまいました。

女性候補者率の高い共産党も今回は苦戦したため、これも女性新人議員の当選率を下げている可能性がありそうですけど、なにより希望の党でしょう。

 

 

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