松沢呉一のビバノン・ライフ

仕事は生・カレシとはコンドーム—カレシとセフレと仕事の境界線[中]-[ビバノン循環湯 358] (松沢呉一) -2,828文字-

毎日セックスするためには—カレシとセフレと仕事の境界線[上]」の続きです。

 

 

 

「セックス友だち」ならぬ「セックス知り合い」

 

vivanon_sentence私の感覚と同じく、「カレシはいないけど、セックスは友だちとしている」と言うのがよくいる。セフレは友だちなのである。

しかし、これも人によって感覚はいろいろで、先日会った風俗嬢は「カレシはいないけど、知り合いとセックスしている」と言っていて、私はつい吹き出してしまった。

「知り合い」は「友だち」よりもさらに距離があって、「もともとそうじゃなくても、セックスしたら友だちだろう」との思いが私にはあるのだが、彼女にとってはセックスしてもあくまで知り合い。「セックスをしてもいい相手」のラインが低くて、あるいはセックスする基準が別のところにあって、「セックスした相手」という意味合いも私とは違うってことだ。

彼女が「知り合い」と言ったのは他に適切な言葉がないためだろう。友だちも、恋人とは違う精神性のつながりはあるわけで、時にそれは恋人を超えることがある。しかし、知り合いはそういう精神性が薄い関係だ。前回のヘルス嬢もこのタイプ。

こういう感覚がわからない人たちは、「カレシとセフレとどこで区別をつけるのか」なんてことを疑問に思うようだが、区別する基準は「気持ち」である。気持ちが入っているのが恋人であり、カレシである。あるいは気持ちの質が違う。セックスでしか人を区別できない人たちには、「気持ちで人を区別する」という精神的営為は決して理解できないだろう。

しかし、この気持ちの違いが、他の行動にも影響を与える。前回のヘルス嬢がカレシには「エッチ大好き」「毎日セックスしたい」とは言えず、カレシ相手では大胆な行動に出られず、思う存分セックスを楽しめないようなものである。

このことは避妊をどうするかに顕著に表れる。ただし、表れ方がまた人によりけりである。

オカモトのリラックマ・コンドーム。リラックマは子ども向けのキャラクターではないけれど、子どもが喜びそう。子どもがいらない時に使うわけだが。

 

 

カレシとはコンドームをつけ、仕事は生

 

vivanon_sentenceあくまで私の知っている範囲の話だが、カレシ以外ともセックスをしているタイプには大きく二種いる。ひとつのグループは、カレシを含めてコンドームをつねにつける。もうひとつはそれ以外、つまり生でもするってことだが、これには各種のパターンがあって、一言では言えない。

まずは「カレシとする時は生、セフレとする時はコンドームをつける」というのがよくいる。「好きな男とはキスをするが、客とはキスをしない」「好きな男とはどんな体位も応ずるが、客とバックはしない」といったルールをもっていた昔のトルコ嬢と同じような「気持ち」による境界線だ。

これだとわかりやすいのだが、風俗嬢だと逆になっているのもいる。仕事で感染することがあるため、カレシに感染させないようにコンドームをつけるのだ。ピルを飲んでいるので妊娠の心配はなくても、カレシにはビルのことを言わず、コンドームを使用するのもいる。

これは「気持ち」というよりも、「客にもらった病気をカレシにうつしたくない」「カレシに感染させて仕事のことがバレたくない」という心配によるものであり、「気持ち」と「心配」を合体させた基準だ。

 

 

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