はみ出した者たち—鴎友学園出身者からのメール(3)-(松沢呉一)-3,366文字-
「トイレでも勉強—鴎友学園出身者からのメール(2)」の続きです。
私の高校時代
やはり偏差値高い系の生徒はあんまり塾に行かないのか。学校のケアがいいので、学内で完結。世界が狭くなるという点ではいくらか問題があるかもしれない。
つっても私だって、高校時代は学校の帰りに本屋、古本屋、レコード屋に立ち寄ったり、パチンコ屋に寄ったり、川原に寝そべってタバコを吸ったりする程度のもんでしたけどね。
高3の時は予備校の現役コースに行きましたけど、そこで仲良くなったヤツと、美人女子生徒の調査を進めているうちに、「たぶんこれは大学受験に関係ないな」と気づいて2ヶ月くらいで行くのをやめました。
もともと授業が苦手であることは重々わかっていましたが、学校の授業だけじゃなく予備校の授業もダメだと確信し、浪人して予備校は行きませんでした。宅浪です。自動車学校は行きましたけど、浪人中はおおむね閉じこもった生活でしたから、鴎友の生徒と近かったかも。
といった自分の経験から考えると、そんなに大きなギャップはないですけど(世界が狭いという意味です)、東京出身者だと、高校時代から学校の帰りにカラオケやって、合コンやって酒飲んで、カノジョやカレシがいて、ナンパもして、と聞くので、そういう伝聞に比較すると大きなギャップがあります。
鴎友学園の最寄り駅は世田谷線の宮の坂です。地味。世田谷線利用者もいるし、北には田園都市線が走ってますから、その沿線からの自転車通学もいるそうですが、大半の生徒は小田急線の経堂を利用しています。だったら、帰りに下北沢や新宿で遊ぶ選択もあるはずですけど、鴎友の9割の生徒たちはそんなことはしません。
これは部活が盛んなこととも関係しているらしい。5時まで部活をやるとそのあと遊んでいる暇がない。公立と違って、住んでいる場所もバラバラで、遠いところから来ているのもいたでしょう。
この狭い世界が成立するのもたぶん中高一貫だからです。公立だったら中学の段階ではじけるのがいて、高校になってからこんな学校に入ったら反発するのがいるはず。
それでも鴎友では数パーセントははみ出すのがいたわけです。
※石川記念館。石川というのは二代目校長。石川記念館は体育館かと思ったのですが、何に使う建物かサイトにも書かれておらず、ユリカモメさんによると、これも普通に授業を受ける校舎だそうです。
はみ出し者たちの生態
私はどうしたってはみ出し系と仲良くなりやすいので、数パーセントの子らにシンパシーがあります。
どんな学校でもはみ出すのはいるわけで、以下は鴎友のはみ出し方。
1割に満たないくらいの居場所に困る子たちは、ひとり渋谷とか出会い系で、居場所を探し出します。そうすると大抵男に行き着くことになりますけど、他にも今どき珍しいヤンキーサークルに入った子もいました。
そのくらいになってはじめて着替えとかね、しはじめるかな。なんちゃの制服とか。
あと女子高生ってのがわかるとまずいときは、スカート短くしてコートからあんま見えなくしてローファー以外の靴にして、リュック登校して、とか。 そうすると、どんどん雰囲気的にも学校に居場所がなくなって、よりそっちに走って、っていう。
そういう子たち同士で話すことはあってもそれぞれ作った居場所が違うから、一匹狼同士みたいな感じで話して終わりですね。
そこで居場所を共有しだすことは殆どない。 他の子に話すにも、男性と話すことすらまずない子にセックスのことなんて話しても仕方ないし、、
私は靴を持って出るタイプでしたが、他の子ほんとにこの生活で大丈夫なのかと思ってたら、やっぱりカウンセリング室はいつもほんとに予約満杯なので、みんなそれぞれ大変だったのかなとは思います。
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