浅草・蛇骨湯閉店の衝撃-[銭湯百景 3]-(松沢呉一)
「毎日新聞」が昨年から「銭湯百景」というシリーズものをやっていますが、「ビバノン」では4年以上前にシリーズもののタイトルとして使ってました。銭湯の話は受けが悪いので、2回でやめて、以降、銭湯の話を書く時もこのタイトルは外すようになりましたが、ひさびさに復活させてみました。このタイトルは福田栄一著『浴室百景』という本からの連想です(とはっきり意識していたわけでもないけれど、ぼんやり頭にありました)。こんなん、ありふれた言葉の組み合わせに過ぎないですから、誰がどう使ってもいいものですが、パクったと思われるのは癪なので、念のために書いておきました。
第三玉の湯の露天風呂
昨日は大井町で打ち合わせの予定でした。銭湯優先で打ち合わせの場所を決定。
しかし、朝から雨だったため、大井町行きは中止としました。このシーズンともなると、私の銭湯巡りは、ヘビマップ作りとパックになっているため、銭湯に辿り着くまでに3時間くらいは歩きます。駅前にある銭湯でも3時間かけます。この日は大井町から東に向かって八潮に行き、そこから西に戻って南大井の銭湯に入る予定だったのですが、雨の中、何時間も歩くのは辛い。
大井町から大森にかけては、私の好きなエリアなので、また別の機会でいいやということで、結局、新潮社で打ち合わせをしました。
新潮社のある神楽坂周辺も歩くのは楽しくて、とくに神楽坂上交差点の近くにある第三玉の湯がリニューアルして以降はわりとよく行くようになりました。建物はそのままですが、露天風呂ができたのが嬉しい。
「サウナのない銭湯には行かない」「天然温泉の銭湯は無条件に価値がある」「銭湯は天井の高さで決まる」「夜の12時過ぎにやっている銭湯じゃないと行けない」など、人によって銭湯を見るポイントは違うわけですが、私にとっては露天風呂のあるなしで大きく評価が変わります。結局、東京のすべての銭湯制覇が目標になりましたが、当初は露天風呂のある銭湯だけを回ってました。
露天風呂があることになっているのに、天井のある「別室風呂」だったりすると、騙された感が拭えないですが、第三玉の湯の露天風呂は完全に天井が抜けてます。建物の脇に無理矢理作った露天風呂ではありますが、都心では露天風呂というだけで及第点です。
昨日も打ち合わせのあと入ってきたのですが、小雨の中の露天風呂はまた格別でした。さらに台風や大雪ともなると露天風呂はサイコーですよ。
蛇骨湯閉店
私とはタイプが違うのですが、新潮社の担当の岑(みね)さんも銭湯が好きなので、打ち合わせの後半は銭湯の情報交換をしてました。
彼に教えられた以下の話には本当に驚きました。
日付を見ると4月1日エイプリルフールです。でも、本当に閉店みたいです。
ほぼ毎月、都内のどこかしらの銭湯が潰れてます。こちらにリストが出てますが、この1年半で32軒が廃業。年間5パーセント程度が消えてます。これは組合加盟の銭湯だけです。数は少ないですが、組合を抜けてから廃業するケースもありますので、実際にはもう少しあります。
以前ビバノンで取り上げた板橋区の北野湯も消えました。おばちゃんにまた会いに行こうと思っていたのに、そのままになってしまいました。デッサンが狂いまくったタイル絵のある新宿区の松の湯も好きでした。駒込の亀の湯はボロくて大きな木造銭湯で、ここは周辺の町並みを含めて好きでしたけど、観光視点として好まれる古い木造銭湯から潰れていくことになってます。目黒区の不動浴場も同じタイプで、ここは忘れられない特徴があるのですが、長くなるので省略。杉並区の成宗湯は店主の趣味で溢れていて、繁盛していそうだったんですけどね。新宿区の金成湯は今年の頭に数年ぶりに行ったら、閉店の告知が貼られてました。
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