猫町倶楽部での質問 [2]/ウンコは食べていいもの?—『マゾヒストたち』(14)-(松沢呉一)
「猫町倶楽部での質問[1]/M女は本にならないの?—『マゾヒストたち』(13)」の続きです。
食べたくない人は食べないに越したことはない
猫町倶楽部の読書会では「ウンコを食べると体に悪いのではないか」との質問がありました。そういえば書いていなかったか。書かなくてもわかると思いますが、念のために書いておくと、「いい」か「悪いか」で言えば「悪い」、少なくとも「よくはない」。大腸菌などの細菌だらけですから、とくに時間を置くと繁殖するので、食べるなら新鮮なうちに。
この質問をしてきた人も「ウンコは食い物ではないので、食べてはいけない」とわかった上で、『マゾヒストたち』を読んだら食う人が複数登場するため、「どういうこと? 話が違う」と困惑したのだろうと思います。いないとは思いますが、『マゾヒストたち』を読んでガツガツ食う人が出てきても困るので、食糞についてもう少し説明しておます。
純然たるスカが好きな人、SMでの黄金が好きな人のうち、前者にはそれなりにいても、後者で食糞までやる人はそう多くはないかと思います(スカ・ジャンルのウンコとSMジャンルのウンコの違いは『マゾヒストたち』を参照のこと)。
「ウンコが好き」にもグラデーションがあって、「映像や印刷物で楽しむのが好きな人」「出すところを見るのが好きな人」「かけられるのが好きな人」「塗りたくられるのが好きな人」「互いに塗りたくり合うのが好きな人」「それをやっているのを見るのが好きな人」「口の中に入れるのが好きな人」などがいて、その先に食べるのまでが好きな人がいます。顔にかけられるのが好きでも食べるのが好きとは限らないわけです。
で、食べたところで一回で確実に病気になるわけではなく、一般に思われているほど体に悪いものではないのですが、長期でスカをやっていて現に入院した人がいます。肝炎です。抗体があれば大丈夫ですし、感染しても自覚のないまま自己治癒する人もいますから、そういう人のウンコから感染したのでしょう。
肝炎をやると面倒です。最悪死にます。飲み込まなくても感染しますから、肝炎のワクチンを打っておいた方がよろしいかと思います。必ず抗生物質を飲む人もいます。プレイのあとは手も洗った方がいいですね。普通にウンコしたあとも。
そうまでしてでも食いたいんだから、それはもうどうしようもないことです。セックスだってさまざまなリスクがあって、各種STDに感染して最悪死にます。社内でやれば解雇に至ることもあり、既婚者が浮気をすれば離婚になったり、刃傷沙汰にもなって、これも最悪死ぬわけですけど、それでもやりたい人はやるのと一緒。
わざわざ言わなくてもわかると思いますが、そこまでしてでも食いたいわけではない人は食わない方がいいと思います。私もウンコより寿司の方が好きです。
※ウンコではなくて、オナラですけど、セルジュ・ゲンズブールの小説『スカトロジー・ダンディズム』。この間の新年会で、人名しりとりをやって、7人中3人がその名前を知らないと無効というルールで、シャルロット・ゲンズブールの名前を出したのがいて、「誰それ?」「セルジュ・ゲンズブールとジェーン・バーキンの娘」「誰それ?」という会話が交わされてました。これはセーフだったのですが、世代も得意分野もバラバラな人たちで人名しりとりや歌しりとりをやるとメッチャ面白い。私がE.H.エリックと言ったら誰も知らなんだ。50代以上じゃないと無理か。
知らないことを知りたい欲望
「取材をしていて、自分もやろうと思うことはないのか」という質問もされました。
これはどっかに書いたような気もしますが、縛られたことも、ムチで叩かれたことも、ロウソクを垂らされたことも、顔面騎乗されたことも、言葉責めをされたことも、殴られたことも、シッコをかけられたことも、乳首に洗濯バサミをつけられたことも、ケツに指やディルドを入れられたこともあります。
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