松沢呉一のビバノン・ライフ

ジャノ・バンド(Jano Band)来日の噂—エチオピアについて知りたかったこと[2]-(松沢呉一)

インジェラとエチオピアン・ポップス—エチオピアについて知りたかったこと[1]」の続きです。

 

 

コーヒーの始まりはエチオピア

 

vivanon_sentence「音楽が好きじゃない」と言いながらも、四ツ木「リトル・エチオピア」のママは、私が好きなアビー・ラクゥ(Abby Lakew)の名前を出したら、すぐさま反応して、「彼女は今アメリカに住んでいるよ」と教えてくれました(名前の発音については後日改めて教えてもらいました。日本語で表記するのが難しい発音があり、アムハラ語のわかる人たちの間では日本語変換に安定した法則があるのでしょうけど、私は全然わからないので、私の表記は聞いたままに変換したものです)。

 

 

テレビに出るくらいのミュージシャンについては彼女もよく知ってます。とは言え、アメリカに移住したのか、レコーディングやライブのために短期でいるのかまでは知らない様子。

料理を出し終えて彼女は時間ができて、コーヒーを淹れながら相手をしてくれます。

コーヒー豆の始まりはエチオピアと言われていて、コーヒーの語源はカファ(Kaffa)というエチオピア・コーヒーの産地の名前から来たと教えてくれました(他の説もある)。今もエチオピアには栽培したものではなく、自生する野生種のコーヒーの木があって、一般にはそれを探してコーヒーを飲みます。タダです。

コーヒーがおいしかったのは豆のためだけでなく、注文してから焙煎しているためかもしれない。焙煎と言ってもフライパンで炙るだけですけど(下の写真)、見るからにうまそう。今はもっと効率のいいミルを使っていることが多いでしょうけど、エチオピアのMVを見ていると、この豆を小さな臼と杵みたいなもので潰しているところが出てきます。

 

 

ネツサネッツ・メレッセと黒い傘

 

vivanon_sentenceこの日は筑摩書房の松本さんとの待ち合わせがあったため、珍しくスマホを持っていて、私の好きな曲のMVもママに見せました。

ネツサネッツ・メレッセ(Netsanet Melese)です。

 

 

 

エチオピア伝統の肩ダンスが堪能できます。

ベテランですから、ママもネツサネッツ・メレッセの存在は知ってましたが、この曲は初めて聴いたそうです。見ての通り、出会いと別れ、死と再生みたいなテーマです。最後に出てくる十字架はそのまんまキリスト教の十字架です。アムハラ人はクリスチャンが多いのです。

このMVに限らず、エチオピアのMVには黒い傘がよく登場します。これは日傘です。このMVでは雨のシーンでも黒い傘ですが、雨用の傘はさまざまな色を使うのに対して、日傘は決まって黒なんだそうです。

黒は暑いと思ってしまいますが、あちらでは黒は涼しい印象があるとのこと。

「エチオピアは日本のような蒸し暑さがなくて、風もあるので、日差しを避けられればいい」

日差しのことだけ考えれば濃い色の方が光を遮断する効果があるのか。これは盲点。てっきり私はこれにも宗教的な背景でもあるのかと思ってましたが、実利的なものでした。文化はいろいろですね。

※今まで私はNetsanetを「ネトサネット」と読んでいたのですが、t音は「ト」「トゥ」ではなく「ツ」とした方がいいとのこと。

 

 

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