マスロックとコルディッツ・グライダー—ナチスの時代とコロナの時代[序章]-(松沢呉一)
「大きな声では言いにくい出張ホスト事情—コロナの時代に流行るもの・廃るもの[18]」からゆるくつながってます。
宇宙コンビニ→JYOCHO
コロナ以降、もっとも聴いているのはBiSHではなく、宇宙コンビニ→JYOCHOです。宇宙コンビニもJYOCHOもほんの数ヶ月前に知って、毎日欠かさず聴いていて、道を歩いていても、銭湯の湯船に浸かっていても、楽器の音や声が頭の中で響いています。
マスロックは頭ん中で複雑なリズムをカウントしなければならないので(かどうか知らんけど)、深刻そうに見える、あるいはそう見せるのが定石なのですが、だいじろーはあんなギターを弾きながら、ライブではよく笑ってます。ホントに楽しいのでしょう。いつも口が塞がっているので、ほとんど聴けないですが、フルートの彼女もきれいな声でコーラスをやっているところも聴きどころです。
マスロック三昧
バルカンやエチオピアの音楽にはまっていた時期が長く、また、国内のものはついカラオケで歌える曲を聴き込んでしまうため、インストや歌えそうにない曲はチェックしていなかったのですが、カラオケボックス休業に伴い、無視してきたパートをよく聴いてまして、とくにマスロックは軽くしかチェックしていなかったので、10年分をまとめて聴いています。
私もこの辺は疎かったように、おそらく「ビバノン」の講読者は最近の音楽については疎いのが多そうなので、改めてマスロックについてはWikipedia参照。
マスロック (Math rock) は、ロックの一種。キング・クリムゾンやスティーヴ・ライヒらの影響を受けた複雑で変則的なリズム、ギターを中心とした鋭角的なメロディや不協和音などが特徴である。
マスは数学(mathematics)のmath。ジャンル分けはたいていアバウトなものなのですが、たしかにこういう名称でくくれるバンド群が世界中に存在しています。
スティーヴ・ライヒから直接影響を受けているバンドはほとんどいないでしょうが、広く言えばミニマル・ミュージック的フレーズの繰り返しが特徴のひとつです。また、なにより数学的に計算したとも思える変拍子を主体とした複雑なリズム展開がマスロックの共通点です。実際に、PCで作曲をするために複雑なリズムが可能になっているバンドもいます。
ルーツとしてはプログレ。キング・クリムゾンやヘンリー・カウなどイギリスのバンド、アレア、アルティ・エ・メスティエリなどイタリアのバンドあたりが挙げられそうです。
今気づいたのですが、アレアとアルティ・エ・メスティエリは来日していたのか。
懐メロ嫌いの私ですが、これは特別すぎます。デメトリオ・ストラトスのいた往時のアレアではないとしても、泣くわ、これ。
三つ子の魂が疼く
英語版Wikipediaはもう少し詳しくて、スティーヴ・アルビニ、Nomeansno、Massacreなどの名前が挙げられています。1980年代以降の日本のバンドだとルインズやYBO2、ボアダムズあたり。
オルタナティブでくくられてきたようなバンド群であり、この辺からは今にストレートにつながってきそうです。
プログレからオルタナティブへの流れを好んで聴いていた私もマスロックにはシンクロしてしまうところがあります。
今現在のマスロックは数学的とされるわりに、エモいのも特徴。泣きのフレーズがしばしば入りますし、ロック的情動が根幹にあるバンドも多い。情動の発露がないと、きれいなギターの音色を変拍子で奏でるイージーリスニングっぽくなります。実際にそういうバンドもいて、BGMにはいいのですが、いざ正座して聴くとなったら私はロック的なものの方が好きです。
あと、女のギタリストやベーシストが重要な役割を果たしているバンドがわりと多いのも特徴か。
Wikipediaではマスロックの始まりは米国と日本とされていて、たしかに日本にはいいバンドがいっぱいいます。
この曲は前から知ってましたが、toeの代表曲。
海外のライブでは客が一緒に歌っていたりします。中国とか。ライブはやっぱりいいなあ。
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