松沢呉一のビバノン・ライフ

メキシコのアナキズム系フェミニストたち—ポストコロナのプロテスト[55]-(松沢呉一)

シリーズとしては「オーストリア国民の4分の1に当たる反移民票がどこに行くのか—ポストコロナのプロテスト[54]」の続きですが、内容としては「パンデミックに勝利したのは麻薬カルテルだった—ポストコロナのプロテスト[34]」から続いています。メキシコつながり。

 

 

 

メキシコのフェミニストたちによる覆面部隊

 

vivanon_sentence以前からすっごい気になっていることがあります。メキシコのフェミニストたちです。

メキシコの一部フェミニストたちは、機動隊にぶつかっていくわ、火を放つわ、警察車両を壊すわ、ガラスを割るわで、プッシー・ライオットが大挙して現れたみたいな状態になっていて、以前から軽く動画をチェックして、どちらかと言えば好意的に見ていたのですが、よくよく検討すると、疑問符がつきます。

十分には事情がわからないので、結論は出せないながら、今現在わかる範囲で、疑問点を見ていこうと思います。

その前からあったかもしれないですが、破壊行動が顕著に出てきたのは昨年からです。

昨年3月の国際婦人デー(International Women’s Day)では、荒れた様子はなく(今は「国際女性デー」と呼ぶことが多いようですが、これも「婦人」の「婦」は差別文字だという例のバカげた主張のせいですかね。歴史的継続性が見えなくなるので、私は「国際婦人デー」でいきます)、たぶん昨年夏のこの行動からです。

 

 

 

 

昨年の7月、メキシコでホームレスの女性が警察官2人にレイプされ、警察官2人は逮捕されています。

8月には、16歳の少女が警察官にレイプされ、同じ8月には17歳の少女が4人の警官にパトカーの中でレイプされています。

8月のふたつの事件では厳正な捜査が行なわれていないとして、抗議行動が繰り返しあって、この動画はこれに対する2度目のプロテストだと思われます。

覆面をしてスプレーでバスや壁に落書きをして、警察車両を破壊し、ガラスを割ってます。以降、このチームを「覆面部隊」とします。メキシコでもそのような表現をされています。

覆面部隊はアナキストマークに♀を組み合わせたマークを描いてます。ただの雰囲気もんの落書きではなく、おそらく彼女たちは「マスクをしてなくて警察に殺された人と背中に火をつけられた警官—ポストコロナのプロテスト[25]」に出てきたメキシカン・アナキスト・グループと同じか、類似グループだろうと思います。

 

 

建物まで破壊

 

vivanon_sentenceプロテストはこの日以降も続きます。

 

 

 

 

建物やバスの停車場みたいな建物まで破壊されています。対警察、対国家の闘いですし、怒りに満ちている時はこのくらいまではありかと。民間店舗までをターゲットにするのは反対ですが、あの建物が何かまでは不明。

 

 

機動隊を圧倒する覆面部隊

 

vivanon_sentence毎年9月28日は、国際安全中絶の日(INTERNATIONAL SAFE ABORTION DAY)。知らんかった。ラテンアメリカが中心で、それ以外のエリアにはそんなに浸透してないようです。

 

 

 

 

ラテンアメリカでは中絶が処罰対象になっている国や州が多いため、モグリの医師や自己中絶をすることで死亡する例が多く、処罰撤廃を求めたプロテストが行なわれています。緑のバンダナが統一のシンボルです。

メキシコでは、メキシコシティでは合法。それ以外ではレイプによる妊娠などの条件以外では違法。ポーランド全土も先頃そうなってしまったわけです。

 

 

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