松沢呉一のビバノン・ライフ

新年早々朝湯を求めて—新・銭湯百景[7]-(松沢呉一)

大晦日に東京の全銭湯制覇を達成—新・銭湯百景[6]」の続きです。

 

 

 

滝野川の稲荷湯へ

 

vivanon_sentence御徒町の燕湯は朝6時の開店時に行かないと高温湯は味わえないことがわかって、「営業時間を通して湯温トップはどこだろう」と考えました。湯島の六龍鉱泉は46度あったと思いますが、昨年廃業してしまいましたし。

トップではないかもしれないけれど、北区の稲荷湯もいいところに位置しそう。ここは2014年に行っています。その時に、「このあと改装する」とおばちゃんが言っていて、改装してからは行ってないので、湯温を確かめるために正月は稲荷湯に行くかなと燕湯の帰りにつらつら考えてました。

うちに帰って調べたら、稲荷湯は3日からの営業です。よし、行くぞ。

最寄り駅はJRでは板橋駅です(都営三田線の西巣鴨も近い)。板橋駅は久々です。古い町並みの残る旧中山道の商店街を抜けて、脇道を入ったところにあって、狭い路地にある佇まいがなんとも言いがたく懐かしい。ノスタルジー派ではない私ですが、こんなところに住んでいたことはないにもかかわらず、記憶の中の風景なのです。

 

 

前に来た時は夜だったのですが、昼でも十分に懐かしい。

あっ。

 

 

入口が閉まってます。壁に貼られた年末年始の営業を書いたカレンダーを見たら、朝湯は2日で今日は休みです。どこでどう間違えたんだか。

さて、どうしたもんか。今日もスマホはもってきてません。

1月3日に朝湯をやる銭湯は5軒に1軒はないでしょう。10軒に1軒くらいしかないかも。ここからあと9軒回れば確率上では朝湯に入れます。朝からやってそのまま午後まで営業する銭湯もありますが、たいていは午前中で終わりです。あと2時間半。2時間半で9軒回るのは難しいですから、もしこの難関をクリアできたら今年はさい先がいい。

今年一年を占う運試しとして回ることにしました。

 

 

庚申塚へ

 

vivanon_sentenceここから一番近い銭湯は板橋駅の向こう側にあるゆーらんどです。そこがやっていなかった場合、その周辺にいくつかあるのですが、場所を覚えている銭湯はもう廃業していて、あとの銭湯は記憶が曖昧で辿り着ける自信がない。

次に近いのは都電の新庚申塚のすぐ近くにあるニュー椿です。ここはスーパー銭湯っぽくて、なんとなく昨日も今日もやっていそうな気がします。庚申塚のすぐ近くにも巣鴨湯があるので、こちら方面の方が確実です。

都電方面に歩き出しました。ニュー椿は「日常視点」としては申し分がないのですが、朝湯に入るんだったら木造銭湯がいい。巣鴨湯はビルの一階ですが、まずはここを見ておくことに。

あっ。

 

 

ここからもうちょっと大塚寄りにもあったはず。記憶がはっきりしないのですが、木造だったかもしれない。

あっ。

 

 

7月に廃業してました。木造じゃなかったからいいか。なんて贅沢は言ってられず、こうなったらどこでもいいや。安心のニュー椿へ。

あっ。

 

 

今日は通常営業で、15時からです。その時間を朝湯とは言わない。この時はまだ10時ちょい前です。たとえば12時からだったら、朝湯ではないけれど、ちょっと時間を潰して入っていくこともありとして、まだ5時間もあります。

喫茶店にでも入って店のパソコンで今日朝湯をやっている銭湯を調べてもらうのが確実か。パソコンがなくても店員さんのスマホでもいい。

そうだ、都電庚申塚の停留場にある甘味処「いっぷく亭」に行ってみよう。前から気にはなっているのですが、一人で甘味屋に入る趣味はない。でも、甘味屋は雑煮を出すところがありますし、雑煮がなくてもぜんざいは正月っぽい。

前に書いたように、都電停留場直結の店は、庚申塚と梶原と三ノ輪のみ。三ノ輪は始発停留場なので別扱いとして、甘味屋「いっぷく亭」に行けば制覇です。二軒で制覇。

あっ。

 

 

4日からの営業でした。人に聞くのはルール違反であり、「運試しとしての効力がなくなる」という運の神様のお叱りかもしれない。

 

 

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