インドの農民蜂起と抗議の自殺—ポストコロナのプロテスト[102]-(松沢呉一)
「「プーチン宮殿」がロシア国民を激怒させた—ポストコロナのプロテスト[101]」の続きです。
インドの農民プロテスト
インドではいろんなプロテストが起きていて、そのひとつひとつに面倒臭い背景があったりするために取り上げにくいのですが、その中でもっとも規模が大きいのはファーマーズ・プロテストです。
昨年10月に農法の改正がありました。3つの法に関わるのですが、ここに来て急に出てきたものではなくて、以前から進んでいた農政改革の一環です。
ざっくり言うと、企業が農作物を買い上げることをスムーズにする方向の法改正です。これに農民たちが反発。彼らの反発はたとえば「企業によって価格を操作されてしまう」というもの。
以下は昨年11月。ここからずーっと続いています。
法の内容がいいのか悪いのか私には判断ができないですが、これにはコロナが関わっていて、ロックダウンで農作物がスムーズに流通しなくなり、その不満もプロテストに重なっています。
農民たちの要求は法律の撤回だけでなく、多岐に渡り、さらには運送業者たちもこれに賛同し、学生たちもこれに同調して、全国で大規模なプロテストが展開されています。
ロックダウンによる皺寄せを受けた人たちは、政府を信用できなくなっているので、何をやっても反対される状態で、直接の当事者じゃない人たちにも飛び火して巻き込んでいきやすい。学生も皺寄せを受けている集団のひとつで、これはこれでプロテストが起きているのですけど、今回は省略。
コロナに乗じて法改正されたとの思いも生じますから、国民の不満が強まっている中では、拙速な法改正は禁物。また、政治家自身がパニックになっていることもあって、やらんでいいことをやりがちという意味でも禁物ですけど、「ドサクサに紛れてやってしまえ」という政治家たちも少なくないのだろうと想像します。インドがどうなのか判断できないですけど。
暴走するトラクター
今週の火曜日1月26日は、憲法発布を祝する共和国記念日で、デリーでパレードがあり、一方で農民たちのトラクター・デモもあって機動隊と衝突し、これまででもっとも激しい攻防が繰り広げられました。
プロテスターたちは歴史的建造物であるレッドフォート(लाल क़िला)を占拠。破壊はしてないので、いいんじゃないでしょうか。
ただ、以下の動画の最後に出ているように死者が出ています。
農民たちによるトラクター・デモはよくありますが、インドではトラクターを攻撃の道具に使っているのが特殊です。
この死者はバリケードを越えようとしてか、破壊しようとしてか、無人のバリケードにトラクターで突っ込んでいって転倒して下敷きになった模様。自爆です。トラクターは運転手が投げ出されやすく、重量があるので死にやすい。
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