ハイチ国内だけでなく、国外でも諦めが広がる—ポストコロナのプロテスト[125]-(松沢呉一)
「治安部隊・国軍・国連軍・私兵による殺害だけでなく、民衆同士の殺害も頻発するハイチ—ポストコロナのプロテスト[124]」の続きです。
やっとコロナ時代のハイチ
長かったですが、ここまではプレ・コロナのハイチでした。ここまでを押さえておくのと、昨今の状態だけを見るのとでは大きく印象が違ってくるはずです。
コロナの前もあとも状況はあんまり変わらない。テーマはその時々で違えども、プロテストが起きて人が死ぬことが繰り返されているだけです。念のためにコロナ以降を確認してみましょう。
2020年3月、感染者が出る前にハイチは国境を封鎖します。
3月19日、初の新型コロナ感染者が出て、すぐさまロックダウンが始まって学校も工場も閉鎖されますが、4月20日から工場は操業再開。輸出産業である繊維工場をストップすると、ただでさえ貧しい国がいよいよ貧しくなって国民は餓死をするという判断。
2021年2月18日付「worldometers」
ロックダウン解除が早すぎたとも言えますが、何をしても、どうせこうなっていたとも言えます。ハイチにおいては国を立て直すことがここ半世紀の最大の課題ですから、そこまでを踏まえると何もしない方がよかったのだと思うのですが、何もしないと「対策をとれ」とプロテストが起きて人が死ぬ。どっちに転んでもそうなるのです。政府と国民の間の信頼などとっくに失われている社会では、何をしても反対されます。
ロックダウンは短期だったとは言え、これで経済はさらに逼迫し、5月からプロテストが連発します。
モイズ大統領はマスクを推奨していて、こんな中でもマスクをしている人が少なからずいます。よくこんな状況でマスクを確保できるものですが、ハイチは繊維産業が強いので、国内でのマスク製造で対応した模様。
犯罪増加に対するプロテストが犯罪を増加させている
7月になると、犯罪増加に対するプロテストが始まります。
ロックダウンでギャング集団が勢いづいたのはメキシコと同じ。食糧も手に入りにくいため、強盗が増えたようです。そりゃそうなるわさ。
だからといって、ここで騒いだら、社会は混乱し、治安部隊はプロテスト制圧に力を注ぐことになって、さらにギャング集団にとっては有利です。
以下は9月。これも武装ギャング団に対するプロテスト。
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