カタルーニャとバレンシアの音楽群[4]—ポストコロナのプロテスト[134]-(松沢呉一)
「カタルーニャとバレンシアの音楽群[3]—ポストコロナのプロテスト[133]」の続きです。
マチューテ・エン・ボカ(Machete en boca)
バルトニクやパブロ・ハーゼル支援の曲「Los Borbones son unos Ladrones」にはマチューテ・エン・ボカのメンバーが参加しています。バルセロナのラッパー4人組です。
ボカは口。マチューテは山刀。口の中の山刀。言葉という武器をもっているぞと。
あの曲の直前に以下を発表。
ゲップをしてます。オゲレツざます。
歌詞はわかりにくいのですが(自動翻訳のためだけじゃなく、事情に通じていないとわからない言葉や表現が入っているし、ラップは俗語、造語、ダブルミーニングも多い)、おそらく裁判所でのパブロ・ハーゼルの動画やその抗議のデモが出てきますし、「Los Borbones son unos Ladrones 」と同様、ガムテープで口を塞いでます。中指を立てていますから、こっちも政府を侮辱したと見なされるかも。サイテーな法律、サイコーのラッパーたち。
リーダー格であるジャズ・ウーマン(JAZZ WOMAN)のソロ。
「私は彼らが話したくない言語が好きです」と言っていて、カタルーニャ語のことでしょうし、品のない言葉のことかもしれない。私も好き。
クララ・ペーヤ(Clara Peya Rigolfas)
「Los Borbones son unos Ladrones」にはヒップホップの人たちと異質な参加者がいます。その筆頭がクララ・ペーヤです。
彼女はカタルーニャのジローナ地方にあるパラフルジェイ(Palafrugell)という小さな漁村の出身です。もともとはジャズのピアニストであり、文化庁みたいなところの賞も受けていて、ヒップホップ・シーンとは遠いところにいそうです。ラップっぽい歌い方もしてますが、彼女は両親とも医者の娘の優等生で、これまで活動はおもにジャズ系の人たちだと思われます。今時のジャズは優等生の音楽。
再生回数を見る限り、そんなに人気のある人ではなさそうですが、私はこの人に惹き付けられました。
MVの中でダントツで再生回数が多いのは先月公開された曲「Mujer Frontera」。スペイン語で「フロンティア・ウーマン」の意味。
。
歌っているアルバ・フローレス(Alba Flores)は女優で監督。以前からクララ・ペーヤと競演しています。
もう一人のアナ・ティジュ(Ana Tijoux)はチリ人/フランス人のラッパーであり、歌手です。
アナ・ティジュの両親はピノチェト政権下のチリからフランスに亡命し、彼女はフランスで産まれて育ちますが、10代で家族とともにチリに戻り、ラッパーとして活動を始め、ヒップホップ・グループMakizaの結成に参画。チリに限らず、南米で大ヒットして一躍スターとなりますが、彼女は匿名の存在でいたくてMakizaは解散し、フランスに戻ります。大スターなのに、フランスでは食い物屋などでバイトしていたらしい。
以降はフランスとチリを行き来しながらの音楽活動を続けていますが、フランスで結婚したため、現在はフランスに居住。
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