松沢呉一のビバノン・ライフ

「蜆町事件」打ち切りと今後の予定と過去一年の「ビバノン」ベスト10-(松沢呉一)

 

我が良識

 

vivanon_sentence気づいた人もいるかもしれないですが、先日スタートした老人詐偽の話は3回目を出したところで非公開にしました。

あれは蜆湯(仮名)の常連である知人に聞いた話がもとになっていて、「なぜ老人は詐偽の対象になりやすいか」「なぜ詐偽の被害者は被害届を出さないのか」という疑問の答えとしては格好の内容、小室圭さんの母親の借金問題を解決するにも格好の内容。興味ないので、小室圭さんがどういう人で、どんな話か全然知らないですが。

しかし、「蜆町事件」について具体的に書けば書くほどどこの話かわかってしまいますし、事実としてはさしたる盛り上がりもなく、だらしなく終わります。そのだらしのなさが重要ポイントであり、この「事件」の被害者たちは金に困ってない。あり余って使い途のない金の一部を提供しただけ。200万円を借用書もないまま貸して、すぐに諦める。これが現実なのですけど、読物としてはつまらない。そこで趣旨を変えないまま、尾ひれをつけまくっているうちに4万字近い大作になってしまいました。

1回目を出した段階では最後まではできていなかったのですが、完成に近づくにつれ、「こんなん、出していいのかな」との疑問が強まりました。尾ひれをつけても、また、地名や人名、店名はすべて伏せていても、コアになる部分はまんまです。銭湯のある町であることも、下町感があることも、営業自粛の補償金で車を買った飲み屋の店主がいることも、金に余裕のある老人たちが被害者であることも、金額も現実のまんま。

おかしなもんで、尾ひれをつけていると、かえって実在の人たちや事実に対して失礼な感じもしてきます。私がきっかけで揉め事になるのもイヤだし、そういった現実への波及がなくても、私自身の倫理にひっかかる感があるのです。

事実は事実として出すべき。フィクションはフィクションで出すべき。いかに「小説として読んで欲しい旨」を書いていても、あの出し方だとそうは読まない人が出てきてしまいます。実際、コアな部分は事実だし。

フィクションで現実から借用するんだったらいいとして、流れとしては事実に虚偽を混ぜて膨らませたのがよくなかったのかもしれない。最初から小説として書けば、金を貸した老人たちが次々と謎の死を遂げるなど、もっと飛躍して面白いものにできたかもしれないけれど、現実に引っ張られ過ぎている点でも中途半端。どうしたもんか。

そしたらさ、一昨日出した3回目はまるでアクセスがなくて、更新後1時間で2PV。おそらくこれは更新作業時のPVなので、実質ゼロです。これからまだまだ続くのに、アクセス最低記録になりそうだということもあったので、「これ幸い」とすべて引っ込めました。

ウソ話を事実として出せば受けるかもしれないけれど、それは私にはできない。そんなことを言っているからメシも食えなくなってきているのですが。そんなことをしてメシを食うなら餓死した方がまし。「読者に受ければウソでもいい」「金が儲かれば人の不幸も利用する」という人間ではないのは私のプライドです。

※蜆町のタバコ屋。まだ言うか。

 

 

しばらく更新は飛び飛びに

 

vivanon_sentence引っ込めたのはいいものの、しばらく詐偽シリーズを出していく予定だったので出すものがなく、すぐにウソ話で金儲けをした出版社の話を次に書き始めたのですが、まとまらない。

不調の時は書けなくなるのでなく、書いてもまとめられなくなります。書くことよりもまとめることの方が頭を使う。その頭が今は少し足りない。詐偽シリーズもいっぱい書きながら、最後のまとめはまだできておらず、このまま未完で葬ります。

こういう時は過去の原稿を循環するのが今までのパターンですが、できるだけそれはやりたくない。私が面白くないので。

連日更新することにしていることにそもそもの間違いがあって、タグマ!でもそんな人はあんまりおらんのじゃないですかね。たいてい週に2本くらいでしょう。

つうことで、調子が戻るまで、飛び飛びの更新になります。それまでは過去の記事で読んでいないものを読んでおいてちょ。

男の名前・女の名前」と「サイレント・エピデミック」は読んだ人は少ないはずですが、理解すると相当に面白い内容だと思いますので、リンク先を含めて読むといいのではなかろうか。と押し売りしてもつまらんものはつまらんでしょうから、皆さんも休憩ってことで。

※写真もいっぱい撮ってありました。

 

 

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